嫌いな人を「消す」ための呼吸法とは?
『嫌いなヤツを消す心理術』(神岡真司著、清流出版)というタイトルは少し物騒にも思えますが、これはあくまで「心理術」のこと。自分の前から「消えてほしい」人をサスペンスドラマのように物理的に「消す」のではなく(そんなことをしたら大事件です)、精神的に、心のなかで「嫌いな人を消す技術」を身につけようということです。
ただし著者によれば、本書のアプローチはそれだけにとどまらないのだとか。嫌いな人に秘かに心理技法を施し、その人の心にも変化を起こすというのです。すなわち、「こちらを嫌う人」という「敵の領域」から抜け出てもらうために、相手のことも操作しようという考え方。
つまり、本当の意味で、「嫌いな人」を消す――ということは、「自分の心」と「相手の心」の両方へ作用させる心理技法を講じなければならないわけです。
これではじめて、キレイさっぱり「嫌いな人」を消したことになるからです。
手順は次の通りです。これを同時に行うことが望ましいのです。※「自分の心を変える」 → 「相手を嫌う心」を消す。
※「相手の心を変える」 → 「自分を嫌う心」を消す。
(「プロローグ『嫌いな人』を消すと人生が爽やかになる!」より)
「自分の心を変える」方法も、「相手の心を変える」方法も、ポイントは潜在意識を上手に活用することなのだといいます。そうすることで、「嫌いな人」は消えてなくなるというのです。こうした基本的な考え方を頭にとどめておいた上で、きょうは第二章「自分の中の『嫌いな人』を消す技術!」に焦点を当ててみることにしましょう。
嫌いな人がスーッと消える呼吸法
嫌いな人のことを頭に思い浮かべてしまうと、知らず知らずのうちに不快な気分になったりするものです。それどころか、場合によっては復讐心に燃えたりすることだってあるかもしれません。が、結果的にそのような感情は膨大なエネルギーを消耗させるだけだと著者は指摘しています。だからこそ、瞬時に頭を切り替えられる方法を知っておくべきだということ。
嫌いな人のことが浮かんだら、まず肩を落とし、全身の力を抜くようにしてください。
そしてゆっくり呼吸しながら、リラックス、リラックスと念じます。
それから、肺活量検査のように、息を大きく吸って一度お腹に溜めてください。ほんの1秒、2秒だけでよいのです。
そして、一気に「ふううーーっ」と全部を吐き切ってみましょう。(中略)これを1~2回行います。(75ページより)
これを続けていると、それまで頭に浮かんでいた嫌いな人のことが、ほとんど気にならなくなるのだといいます。そしてその後は、ゆっくり呼吸しながら、好きなことを思い浮かべてみる。とてもシンプルですが、この方法によってリラックスできることには根拠があるのだそうです。
人間の本能には、不快な気分を早く取り除きたいという潜在意識の働きがあるもの。そのため、「快の状態」へとスムーズに移行できる段取りさえ整えれば、容易にそこへ行き着けるということ。
これはドイツの精神医学者J・Hシュルツ博士が考案した、「自律訓練法」の原理に依拠した方法なのだといいます。自己催眠法の一種である「自律訓練法」は、心身症やストレス緩和に効果のある治療法。上記のメソッドは、これを短い段取りで行えるよう大きくアレンジしたものなのだそうです。
本来の「自律訓練法」は、段取りに多少の時間がかかってしまうもの。そのため、瞬時に効果を得るためには「意識呼吸法」のほうが素早く簡単だというのです。「意識呼吸法」が「自律訓練法」と異なるのは、呼吸を中心とした体感から自律神経に信号を送るところ。
呼吸という体感を通じ、脳に「いまはリラックスしてよい状態」だと信号を送るわけです。そうすることで交感神経の働きが抑制され、リラックス時に働く副交感神経を活性化させるというのです。(74ページより)
「意識呼吸」で自律神経の働きをコントロール
大きく息を吸い、息を吐き切ることによって、全身の緊張や興奮をつかさどる交感神経の動悸をリセットするのが「意識呼吸法」。次いで全身をリラックスさせる副交感神経の活性化へと、素早く「快」の状態を浸透させていくのだそうです。つまり、イヤな人、苦手な人、嫌いな人のことを一瞬で心のなかから除去したいとき、この方法に即効性があるということ。
息を吐ききったあと、瞬時に好きなモノや人のことを思い浮かべるだけ。しかしこの方法でリセットすれば、嫌いな人のことを思い出したために中断してしまった仕事なども平常心で継続できるようになるというのです。
ちょっと戸惑ってしまうほどシンプルですが、意識して呼吸していくことには、さまざまな効能があるのだと著者はいいます。呼吸とは本来、無意識の領域がつかさどる働き。つまり自律神経が、自動的に身体諸器官を動かす働きのなかで、無意識に呼吸するのだということ。
たとえば発汗作用や心臓の拍動、胃の蠕動(ぜんどう)、撹拌(かくはん)、消化酵素分泌といった機能は、すべて無意識の自律神経がコントロールしてくれている領域。つまり私たちは、意識的に心臓の鼓動をコントロールしたり、胃の運動を調整したりすることはできないわけです。
しかし、自律神経の自動的な働きのなかでも、呼吸だけは別物なのだと著者。なぜなら、「無意識」と「意識」の両方でコントロールすることが可能なものだから。したがって呼吸を意識的にコントロールすることで、自律神経機能にも、意識的な作用を及ぼしていくことが可能になるというのです。(79ページより)
「意識呼吸」の効用
緊張する場面に直面すると、私たちには変化が起きます。体の筋肉が硬くなり、呼吸が浅くなり、心臓の拍動が速くなり、手のひらや額に汗を浮かべたりすることがあるわけです。これは、動物が敵を発見したときと同じ状態なのだと著者は解説しています。
つまりは「戦う」か「逃げる」かの選択を迫られる場面であるため、次の動作に移るための緊急態勢になるということ。そしてこれは、無意識(自律神経)がコントロールしてくれているのだといいます。
相手が敵ではないと知ってホッとするのは、緊張が一気に緩み、リラックス状態へと向かうから。興奮時に活性化する交感神経が抑制され、安静時に活性化する副交感神経が活性化しはじめるというわけです。
私たち動物は、目や耳、鼻、身体状況(雨、風、体感温度など)を通じ、「いまが自分にとって脅威のある場面か、そうでない場面か」を判断しているもの。たとえば嫌いな人のことを思うと、脅威を感じるため緊張し、本能には抗うことができないために興奮するわけです。
そのため、冷静な思考や、落ち着いた緻密な判断ができなくなるということ。他の動物にはない、人間ならではの「理性」が、興奮状態によって妨げられてしまうということです。しかしそんなとき、呼吸を意識的に、リラックス時と同じ状態へと切り替えていくと、副交感神経が活性化することに。そのため、大きく、ゆっくり深呼吸すると、だんだん落ち着いてくるというのです。
※腹に一杯息を詰め込み、少し目を細めて状況を窺うと、度胸がつきます。
※意識的に、静かにゆっくり息をしていると、いつの間にか眠れます。
※自分の呼吸をゆっくり数えていると、周囲の状況が冷静に把握できます。
(82ページより)
このように呼吸を意識的に使いこなせば、いつでも平常心が取り戻せる。著者は、そう主張しています。
多かれ少なかれ、誰しも対人関係の悩みは持っているもの。だからこそ本書を活用し、現状打破を目指してみてはいかがでしょうか?
(印南敦史)
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