年が明けて、気がついたらもう1月も半ば。新年は晴れやかに!と思っていたが、休み中の親戚付き合いや旅行などが原因で妻と険悪なムードに。いまだにそれが胸にひっかかっている。
仕事のほうも、正月休み明けでいまひとつ気分が乗らない…
せっかく年末には禅カフェへ行って禅を覚えたというのに、早速道に迷っている感じだ。
胸に渦巻くこのモヤモヤを誰かに聞いてほしい時もあるが、そんなことは知人友人に言いにくいお年頃の40代。
そこで見つけたのが「坊主バー」なる、お坊さんが経営しているバーだ。
なるほど、知り合いには話しにくい家庭内のことも、みのもんたには話せるあのノリだ。赤の他人であるお店の主人だからこそ気兼ねなく話せることもあるだろうし、お坊さんなら、何かいいアドバイスをくれるかもしれない。Zen Café以来、お坊さんへの信頼度が急上昇中の筆者としてはぜひ行ってみたいと思い、1月某日、坊主バーへ足を運んでみた。
坊主バーってどんなところ?
坊主バー、正式名称は坊主BAR- VOWZ BAR –は、東京メトロ 四谷三丁目駅から徒歩2~3分ほどの場所、車力門通りのつきあたりにあるお店だ。どうやら浄土真宗の僧侶によって運営されているらしい。
開店が2000年ということだから、すでに16年間も営業を続けているようだ。店の中では法要や法話を行うらしい。簡単に言うと、法要はお坊さんにお経をあげてもらうことで、法話はお坊さんに話をしてもらうことだ。こう聞くと、どうも堅苦しそうに感じるが、実際は気軽にお酒を飲みながら仏教の話ができる場所だ。要はお酒を飲みながら様々なことをテーマにお坊さんと座談会を行うような感じだろうか。さらに、不定期で坊主バンドなるものの公演も行っているというから驚きだ。
浄土真宗は、禅カフェの記事のときに禅を教わった臨済宗などの禅宗とはまた異なる宗派だ。最近では現役のお坊さんがWebで悩み相談に乗ってくれるサイト hasunoha.jp なるサイトもあり、お坊さんの悩み相談には注目が集まっている。もともとお寺というのは地域に根付いており、悩み相談にも乗っていたらしいので、お坊さんと悩み相談というのは切っても切れない関係なのかもしれない。
これは期待してもよいのではないだろうか。
坊主バーに潜入
四谷三丁目駅の4番出口を出て、左にいき、みずほ銀行の角を曲がると、そこが車力門通りだ。飲み屋街らしく、坊主バー以外にも面白いお店がいっぱいある。さまざまな誘惑に誘われつつ、まっすぐに進むと、一見してとてもお坊さんがいるお店には見えない看板が見えてきた。
か、かっこいい…。
文字を変えれば、まるでロック喫茶のような看板ではないか。ここに本当にお坊さんがいるのだろうか?という疑問を抱えつつ、お店へと向かう。
雑居ビルの2階のため、一見さんは少々入りにくいかもしれない。筆者も恐る恐る階段を登っていく。2階には、看板とは違った控えめな表札がある。
その扉を開けると、看板からは到底想像できない、落ち着いた空間が広がっていた。なんと、店の奥には仏壇があるではないか。
さすが坊主バー…
迎えてくれたのは現役のお坊さんだという、藤岡善念(ぜんねん)さん。(写真:左)お坊さんに言うことではないかもしれないが、とても物腰柔らかで感じのいい人だった。
右の方は、後で悩み相談に乗っていただく田口弘願(ぐがん)さん。この店のオーナーだ。
この時はタイミング良く、客は筆者一人だった。これならゆっくり、相談できそうだ。
食事のメニューは精進料理。そして飲み物はお酒が豊富に揃っていた。中でも人気なのが坊主バーカクテルだ。「極楽浄土」や「無間地獄」など、ありがたくもおそろしいメニューが続く。
面白かったのはメニュー表が経文のようになっていること。読経する感覚でいろいろと頼みたくなる。
筆者に「地獄」を経験する勇気はなかったので、一番人気でもある「極楽浄土」を頼んでみることに。精進料理は「たくあんの甘辛煮」をチョイスした。
お通しで出されるのはカリカリパスタならぬ、カリカリひやむぎ。パスタではなくひやむぎを揚げているのだそうだ。このあたりも坊主バーっぽさが出ている。
カクテル「極楽浄土」はお酒をクランベリーやマンゴーなどのフルーツジュースで割ったもので、どことなく南国を感じさせる味わい。お釈迦様が生まれたインドも暑い国だし、極楽浄土はやはり南国リゾートのように素敵なところなのだろうか、と思いをはせる。
カクテルの甘酸っぱさを味わいながら、藤岡さんに少し質問をしてみる。
入店した時から気になっていた奥の仏壇は、法要を行うときに使うもので、法要後は説法などを行うらしい。今日はお客さんが少ないので、まだやらないが、だいたい20時くらいになると満員になるので、そのタイミングで法要が行われることが多いとのことだ。
また客層は、なんと意外にも若い女性が多いそうだ。高齢の方も来るそうだが、40代の男性というのは実は少ないらしい。
ネットなどで話題になっている場所なので、情報感度が高い人たちがやってくるのかもしれない。ちなみに一番多い悩みは恋愛相談ということだ。
お坊さんに悩みを聞いてもらう
そうこうしていると、藤岡さんに水を向けられ、オーナーの田口さんとのお話がスタートした。田口さんは普段の悩み相談などもよく対応していて、法話も行っているそうだ。
いきなりだが、素直に今の悩みをぶつけてみた。
筆者:新年が明けてから休みボケか、どうも仕事に集中できないんですよね。
どうしたらいいですか?
田口さん:それは困りましたね~。逆に休日もほんの少しでいいので仕事をするようにすればいいですよ。
足が痛いからっていってずーっと寝ていると身体に悪いでしょ。あれと一緒です。ちょっとでも仕事を
する時間を取れば、やる気が保てますよ。
仕事のことを忘れるくらい楽しいことができたのなら、それは逆に切り替えがしやすいと思いますよ。
ふむ、なるほど。
確かに休日に仕事なんぞしたくない!といってなんにも手をつけないでいると、逆にいつでもどこでも仕事のことを気にしている状態になってしまう。ならばいっそ、ちょっと仕事をしてしまえばいいのか。
確かにそれならサッパリと切り替えができそうだ。
また、悩みをため込んでしまう人はどんな人か、についても聞いてみた。
田口さんいわく、「わたしが」と頭に付く人は危ないとのことだった。口には出さないまでもそこには「どうして“よりによって”わたしが」という気持ちが隠れており、それはつまり、自分は経験したくないけど、他の人は経験してもいい、という思いの現れなのだとか。
田口さんは生まれつき目が悪く、昔は「どうして“よりによって”わたしの目が悪いのか」と思っていたのだが、仏教と出会って、「他の人にこんな思いをさせるわけにはいかない」と考えるようになったのだとか。
また、一つの原因から一つの結果しか導き出せない人も要注意だとか。「自分が不幸なのはアイツのせいだ」と思い込んでしまう。こういう人は逆恨みをしてしまうらしい。自分を正当化して、他を悪者にする。果たして自分は妻ばかりを悪者にしていないだろうか、と我が身を省みた。
悩みというのは自分ごとであるがゆえに、必要以上に大きく捉えてしまいがちだ。でも少し目を外に向ければ、よくあることでしかない。だから少し落ち着いて周りを見渡してみれば、案外解決の糸口はある。少なくとも細かいことでイラつくことはなくなりそうだ。
この日は最後まで他のお客さんは来なかったのだが、特別に法要をしていただき、店を離れることにした。
まとめ
今回お相手をしていただいた田口さんはとにかく話しやすい人だった。また、なにげない会話でもその考え方にはハッとさせられることが多かった。
話の流れで、筆者の父が筆者の誕生日に亡くなった話をした。自分の誕生日が父の命日というのはずっと心のどこかに引っかかっていた。筆者にとっては、何かの暗示や意味を考えずにはいられない出来事だからだ。
しかしそれを聞いた田口さんは「すごいですねー。でも考えてみれば1/365ですよ。それほど珍しいことじゃないですよ」と言われた。こうアッサリ言われると、とても心が軽くなったのだった。それまでの心のわだかまりが、スッと消えていくのが分かった。
冒頭の仕事のやる気の話にしろ、悩みを抱え込んでしまうことにしろ、田口さんの出す答えはとにかく単純明快だった。「そんな単純なこと?」と思うかもしれないが、これが案外言われるまで当の本人には思いつかないものなのだ。
人は考えすぎてしまって、物事を必要以上に複雑にしてしまっているのかもしれない。一人で考え込んでしまうと、特にそういう状態に陥りやすい。そう思えただけでも、今回の訪問は大成功だったように思う。
あなたも悩みを抱えてしまったら、四谷の街角にある、お坊さんがいる風変わりなバーで、抱えている思いを吐露してみてはどうだろうか?
きっと、田口さんや藤岡さん、その他のスタッフであるお坊さんが優しく包み込んでくれるはずである。
関連記事
【来年は余裕のある人になりたい】座禅ができるカフェ |
【ストレスの元凶は?】ストレス社会で戦うあなたにストレスフリーになる方法を伝授 |
エリート実践 リフレッシュ法 |
- ブーストマガジンをフォローする
- ブーストマガジンをフォローするFollow @_BoostMagazine_