国民的テレビ番組「笑点」も歌丸師匠が勇退し、まだ若い春風亭昇太さんが司会になるなど、なにかと注目を集めている落語界。そういえば円楽師匠のことも話題になってたな。
筆者も小さい頃から笑点を見ているし、「寿限無」の話なんかは聞いたことがある。まったく知らないわけではない。とはいえ、では「落語とは?」と聞かれるとよくわからない。おそらく、あなたもこんな具合ではないだろうか?
だが、そんな落語がいま、お年寄りだけではなく若者からも注目されているのをご存じだろうか。筆者自身、周りで落語の話題を耳にする機会が多くなっている。そこで今回は落語界の現状を調べてみた。
「落語のことはあまり知らない」、「落語っておっさんくさい」とか、気になりつつも「寄席に行くのはちょっと…」と思っている人にぜひ読んでいただきたい
落語ブームってホント?
と、まあ冒頭で言い切ってしまったが、筆者も落語はどこか“お年寄りの趣味”的なイメージがあった。だが、ブームとはいつだって若者が牽引する。落語ブームだって同じく、その原動力は若者だったりするのだ。
落語が注目されているのは、なにも笑点の影響だけではない。その要因としては3つの要素が考えられる。
①メディアミックス
メディアミックスとは異なったメディア同士が結びつくことを差す広告業界用語だ。ちょっと説明が堅苦しくなってしまった。つまり寄席が主な表現の場であった落語が、テレビやラジオ、本などのメディアと結びついたことで、寄席に限らず身近なところで触れられるようになった。
ひと昔前でいえば、ジャニーズ主演、宮藤官九郎脚本で人気となったテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」がある。落語にもともと興味のあった中年~高齢層はもちろん、ジャニーズファンをはじめとした若年層が、落語に興味をもつきっかけとなった好例だ。
また、最近では「昭和元禄落語心中」や「じょしらく」など、落語を題材にした漫画も生まれており、どちらもアニメ化されるなど、若い世代を中心に人気を博している。
②イケメン噺家
イケメン噺家と言われる若手の噺家たちが女性の人気を集めているそうだ。なんでも出待ちをする女性が出るほどの人気なんだとか。さっきのアニメだって主人公がイケメンなのが女性を惹きつける理由の一つになっているのだろう。
柳亭市弥や柳亭小痴楽、桂あおばなどの噺家がそう言われているらしい。
ちなみに隣の席のT女史に聞いてみたところ、彼女的には柳亭市弥がよいとのこと。ふむ…
③寄席以外での公演
こうして興味をもつ人が増えてくると、あとは見る場所が多くなればよい。というわけで、若手の噺家を中心に寄席だけではなく、様々な場所で公演を行う動きがある。カフェスペースで臨時に公演を行ったり、映画館やコワーキングスペースなどで行うなど実に多種多様だ。
その中でも有名なものが、通称「シブラク」こと「渋谷らくご」だ。
会場となるユーロライブは、渋谷の中でも流行に敏感な若者が集まるエリアにある。他にも恵比寿には「みちくさ落語」なるものがあったりと、若者のスポットにも多く進出しているのである。
また、神保町にある「らくごカフェ」ではアルコールを呑みながら落語が聞けたりする。
年配の方々だけにとどまらず、こうして落語は若者にも着実にその裾野を広げつつある。「ちょっとおじさん臭い」と思っている人は考えを改めたほうがよいかもしれない。
このような人気を受けて、動画メディアであったり、WOWOWなどの有料放送などでも落語の番組が増えつつある。ちなみに先述した「渋谷らくご」はWEBで動画を見ることもできる。
らくごカフェに行ってみた!
ここまでイロイロと調べ物をしていてすっかり落語熱が高まった筆者は、らくごカフェとやらに行ってみることにした。気楽に行けるようになったとは言っても、落語の演目といえば「寿限無」と「ときそば」くらいしか知らない筆者である。いきなり寄席に行くのは敷居が高い。お酒を呑みながら楽しめる、ゆるい場所のほうが行きやすいと考えたためだ。
そうと決まれば、さっそく電話して席があるか聞いてみよう。
筆者:「すみません、今日の公演、まだ空いていますか?」
カフェ:「大丈夫ですよ、予約されますか?」
筆者:「予約したほうがいいですか?」
カフェ:「そうですねー。予約したほうが300円ほどお安くなります」
ふむ。予約すると割引があるのか。
すすめられるままに予約をした。別に300円のためではない。予約したほうが確実に入れるからなので、あしからず。
開場は18:45、開演は19:15とのことなので、18:30くらいに神保町へ向かった。現場について会場をキョロキョロと探すが、なかなか見つからない。
どうやら雑居ビルのテナントのひとつらしい。そのビルはかの有名な岩波ホールの2軒となりにあった。なかなか味わい深い場所だ。
入り口はビルの裏口。うーん、初めての人には少しばかり入りにくい気もする。。。エレベーターで5階へ上ると目の前にカフェスペースがあった。
受付で名前を告げ、1,500円を払い、席に付く。正面には高座があり、真後ろにはバーカウンターがある。今日はアルコールを控え、コーヒーをいただく。ちなみにコーヒーは500円だった。
今回の公演は柳亭一門の柳亭市楽さんによる三席とのこと。パンフレットには「野ざらし」とあるが、これが演目名なのか?開演まで期待に胸を膨らませて待つ。
初めてでも大爆笑!噺家はやはり話のプロ!
結果から言えば、終始笑いっぱなしだった。今回聞けたのは「天狗裁き」「野ざらし」「井戸の茶碗」の三席。もちろんどれも初めて聞く内容である。どの話も面白かったのだが、筆者が一番感心&笑ったのは、本筋に入る前のトークだ。
時事ネタやあるあるネタを織り交ぜつつ、なにもつながりの無いようなことをつらつらと話すのだが、これが面白い。そして話が始まり、オチを聞くと、「なるほど前段の話はこのためだったのか」と腹落ちするのである。オチがある話だから「落語」とはよく言ったものだ。
調べてみると、この前段のことを落語では「まくら」と言うらしい。その目的はまさに今述べたようなネタにつながりつつ、会場を和ませることなのだとか。
なるほど!前段もネタの一つなのか。
まさかボブ・ディランの話から居眠りの話になるとは夢にも思わなかった。さすがは話のプロ!
それから、話のアレンジ力。古典落語も市楽さんの手にかかると現代の時事問題や自分自身のことをネタにしてアレンジがされている。
市楽さんの他の舞台を見たことも、もとの話も知らない筆者だから、あくまで想像に過ぎないが、客層や客の反応を見ながらうまく話を組み立てているのだろう。おかげで初体験でもわかりやすくなり、大変楽しむことができた。こうなると、別の舞台も見たい、もとの話を聞いてみたいという気にさせられる。
今回の演目で、筆者が一番ハマったのが「井戸の茶碗」だ。「天狗の裁き」もそうなのだが、どちらも同じパターンで騒動が少しずつ大きくなっていく。
騒動に巻き込まれる本人の「ソラ来るぞ、ソラ来るぞ」と身構える気持ちと、こちらの期待感がリンクしているようで、「来た」瞬間の爆発力がすごい!
そこに来て、市楽さんもエンジンがかかったのかバシバシアレンジしてくるものだから大いに笑わせてもらった。
まとめ
結局のところ、ブームとは関係なしに純粋に落語の面白さにすっかり胸を打たれる結果となった。こうして気楽に聴きに行けるのはやはり今の落語人気の恩恵であろう。若者もハマっているのだし、おじさんくささもない。というか一度聞いてしまえば、きっと筆者同様、体裁など関係なしに引き込まれてしまうだろう。
加えて、話の面白さももちろんだが、笑うために行く空間というものがとても心地よく、なんだか肩の力が抜けたようだった。忙しい毎日の中に、こうした時間があるのも悪くない。
市楽さんはこういった公演のほか、一般の方向けに落語の勉強会なども行っているようだ。「自分でも一席話してみたい」というハマり方もありだ。
ちなみにらくごカフェの客層は、やはり年齢層が高めだった。渋谷などに行けばまた違うかもしれないが、それはそれで寄席とは違った敷居の高さを感じそうな気がする…筆者としてはやはり初めての落語には「らくごカフェ」をおすすめしたい。
今度はぜひ寄席にも行ってみたいと思う。機会があればまた、この場を借りて報告するので、楽しみにしていてほしい。
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