グループリーグをうまく勝ち上がってきた日本代表は、先日の決勝トーナメントで惜しくもベルギーに逆転負けという結果に。
正直個人的には決勝トーナメントでベスト8進出は難しいと予想していたが、ベルギー戦ではそんなことを感じさせないイレブンがフィールドで躍動していた。
西野監督「何が足りないんでしょうね」
試合後のインタビューで西野監督はこう語った。
「ワールドカップの怖いところでしょうか。追い詰めましたが、何が足りないんでしょうね。オフェンシブには戦えたので、3点目を取れるチャンスもありましたし。ゲームをコントロールできていました。でも本気のベルギーがそこにありました」
何が足りなかったのか。足りないものを探すとなれば色々なものが出てくるかもしれない。それよりもあの時にベルギーにあって日本に無かったものがあり、その少しの差がこの勝敗を分けたのではないだろうか。
試合後の会見で西野監督が語った内容がその差についてだった。
「あの時間帯のフリーキック、コーナーキックの流れがあった。少なくとも決めたい気持ちもありましたし、延長ももちろんその時間帯に考えていた。まったくああいうスーパーカウンターを受けるとは予測していなかった。数秒後に自陣のゴール前に運ばれるという。本当に紙一重の勝負どころなのかなと。」
アディショナルタイムは+4分で本田のフリーキックを相手GKがセーブした時点で3分が経過。そしてコーナーキックを相手ゴールキーパー(以降GK)がキャッチし、カウンターが発動、ベルギーの決勝点が決まったのが3分45秒。
選手たちがアディショナルタイムを正確に把握していたのかはわからないが、ベルギーは最後の最後まで1点を取りに、残り1分になっても勝ちに来ていた。
勝者のメンタリティ
勝者のメンタリティと聞くと「勝負を諦めない気持ち」と簡単にまとめたことを言うかもしれないが、そのまとめ方を私はよく理解できなく消化不良の意訳としてとらえていた。プロの選手が簡単に勝負を諦めることなんてないだろうと。その消化不良で引っかかっていた「勝者のメンタリティ」というものは何なのか、それがベルギーのこの45秒の出来事でしっかり理解できた。
日本は試合の中でベルギーの選手のスピードに対応できずファールで対応するシーンがいくつかあった。つまりベルギーは日本にスピードで勝っており、カウンター1発で逆転ができるという状況判断がベルギーにはしっかりあったのではないだろうか。
決勝点を決められたあの時、状況的には最後の1プレイになりうるコーナーキックであったため、ベルギーからみた前線のスペースは大きく空いている。後半最後で動けなくなっている日本の選手もいた。その状況ひとつひとつを冷静に判断していたのではないだろうか。
アディショナルタイムギリギリのコーナーキックでも、GKがキャッチしたら終わりではなく、カウンターの大チャンスであることをベルギーの選手たちは過去の経験などから共通認識していて、カウンターを成功させたのではないかと。
事実、コーナーキックでストーンに入っていたデ・ブライネはGKがキャッチする直前からスタートを切っている。同タイミングでペナルティーエリアにいた日本の選手は反応が遅く、近くにいた昌子が気付いた時、デ・ブライネは2m先を走っていた。
あの極限の状況での判断の差。その差が勝者のメンタリティと言うならば、それは様々な経験からくる余裕なのではないか。どんな状況でも勝つためにやるべき策を冷静に判断しながら実行に移す。それができる余裕が普段の経験や練習で身についていたか、いなかったか。
結論から言うと日本にはそれが無かった。あったのであれば、状況からGKがキャッチした時点で大ピンチとなり、急いで中を固めにもっと多くの選手が戻るために反応していたはずだし、カウンターの起点になるGKのスローイングを遅らせるような動きをする選手がいてもいいはず。もしくは名将カペッロが言う通り、あのコーナーキックはそもそも大きく蹴らずにコーナーフラッグ付近で時間を使うべきだったのかもしれない。
そう書く私自身もあのコーナーキックからあんな簡単に綺麗なカウンターが決まるとは思っていなかった。たぶん日本の誰もがあの残り数十秒であんな結果になるとは思ってなかっただろう。
次のW杯、カタールに向けて
今回のW杯で日本代表の試合をしっかり見届けたことで、上の世界はどういうものなのかをはっきりと見せつけられた。ドーハの悲劇の次はジョホールバルの歓喜というドラマが待っていた。次回W杯ではベスト8入りするサムライブルーが観られることを期待して日々のサッカーを楽しみに観ていきたい。
ライター:コーンK
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