街によって 「売れる味」にも傾向が。東京・最新フードトラック事情
デスクでランチを食べてはいけないなんて言うけれど、毎回外食ばかりだと、お金がかかる上に塩分・油分の過多、栄養の偏りなんかも気になります。かといって、毎日お弁当を用意する時間を捻出するのも難しいし、いくら手軽だと言っても、連日コンビニランチ(工夫の余地はありますが)やファーストフードで済ませるのは味気ない…。
そんななか、最近ランチタイムのサードプレイスとして定着しつつあるのが、フードトラックが提供するテイクアウトメニューです。すでに大いに活用している、と言う人も多いのではないでしょうか? より手軽にリーズナブルに、その時々の気分でメニューを選べることで外食やコンビニでは満たされない欲求を満たしてくれるというなら、利用しない手はありません。
ビジネスパーソンに日々「食」の選択肢をあたえてくれるフードトラックの舞台裏は? 株式会社mellow代表取締役の柏谷泰行(かしわや・ひろゆき)さんに話を伺いました。
ランチのクオリティーを底上げ
mellow社は、活用されていない空地とフードトラックをマッチングして、シェフのこだわり料理が気軽に食べられるサービスを提供するフードトラック・プラットフォームを運営。東京、神奈川、千葉、埼玉を中心に50カ所でランチを展開して、場所の特性に合うフードトラックを日替わりでスケジューリングすることで飽きのこないランチ体験を提供しています。
ランチの満足度は、午後のパフォーマンスを左右します。時には、ビジネスへのインスピレーションを与えてくれてることだって。前職ではスマートフォンアプリのプロデューサーとして働いていた柏谷さんですが、その時にフードトラックで出会ったパエリアの味に感動したことが、mellow社を立ち上げたきっかけになったといいます。
そのきっかけとなった、パエリアを提供している店の名前は「TOKYO PAELLA」。現在では、mellow社が運営するランチスペース「TLUNCH」でも味わうことができます。ヨーロッパで修行した後にパエリアのフードトラックを立ち上げた同店の吉沢シェフは、10年近くパエリア一筋で腕をふるい、スタンダードな魚介パエリアだけでなく、週替わりのオリジナルパエリアを提供し続けています。
フードトラックの調理スペースには限りがあるので、レストランのようにバリエーションあるメニューは提供することができません。だからこそ、確信を持っておすすめできるメニューに注力してブラッシュアップし続けるのです。「TOKYO PAELLA」の吉沢シェフも、パエリアと向き合った時間は誰よりも長いと言えるのではないでしょうか。
そんな「TOKYO PAELLA」のフードトラックですが、時には30人近くの行列できることも。できたてのパエリアを提供するためには、1人あたり1分程度の時間を要します。つまり、列が30人だと30分待ちです。それでも、並んででも食べたいと列をつくる人があとを絶ちません。
さらに、フードトラックは「場所の特性に合うものを日替わりでスケジューリング」しているとのこと。場所柄だったり、働く人の職種や属性にあったりとその理由さまざまですが、やはり街によって “出るメニュー”にはわかりやすく傾向が見えてくるのだそう。柏谷さんに、都内フードトラックの最新トレンドを教えてもらいました。
新宿・代々木エリア
このエリアで特に人気のメニューは「クッチーナ・ダイノ」さんの生パスタです。お客様の注文を受けてから生パスタを茹でて、出来立てのパスタを提供しているこだわりのお店です。プロの料理人が茹でたてで提供するのでコンビニ等のパスタとのクオリティの違いは明らかです。
スタンダードなボロネーゼ、トマトソース、クリームなどのパスタだけでなく、季節に合わせて「しらすとアンチョビのペペロンチーノ」「チーズと黒胡椒のパスタ」など限定パスタも提供しており、飽きずにおいしいパスタを楽しむことができます。
新宿・代々木は持ち帰り弁当の需要が大きい激戦区なので、普通のお弁当では味わえないような個性を持ったメニューが支持を集める傾向にあり、茹でたて生パスタなど明らかにクオリティに差が出るメニューが人気になりやすいです。
渋谷エリア
渋谷エリアで特に人気のメニューは「GRILL TOKYO」さんのBeef Over Riceです。ローストビーフをお客様の目の前で肉の塊からカットして、大胆にごはんにのせたメニュー。「うまい肉を食している」という実感がダイレクトに感じられる逸品です。
渋谷エリアは、近年、急速にベンチャー企業の数が増えており、20〜30代の若いビジネスパーソンの割合が他の地域より高くなっているため、ガッツリとしたお肉系のメニューが人気になる傾向があります。また、感度が高い若者が多いためローストビーフのような比較的新しい料理も人気になりやすいです。
表参道・青山エリア
このエリアで特に人気のメニューは、「ミラーン」さんの南インドカレーです。インドから直輸入した新鮮なスパイスをたっぷり使用していて本場の味が再現されており、一度食べるとやみつきになります。さらに無添加にこだわったヘルシーなカレーになっており、多くの女性の支持を集めています。
表参道・青山エリアはファッション・美容業界で働く女性が多く、スパイスが効いているランチや、健康志向なランチが人気になる傾向にあります。この両方の要素を満たした南インドカレーがたくさんのリピーターを集めています。
六本木・赤坂エリア
外資系企業が多いため、ベジタリアンフードなどが人気になる傾向があります。また、急成長するベンチャー企業に務める女性も多く、日本であまり目にしない珍しい料理が好まれる傾向にあります。こうした要因により、ベジタリアンフードと目新しさという両方の特性を備えたコシャリというエジプト料理を提供している「コシャリ屋」さんが人気になっています。
コシャリはエジプトの国民食で米、マカロニ、スパゲティ、豆などをトマトソースやスパイスと一緒に混ぜて食べる料理です。暑い国で愛される料理だけあって、食欲が無い日でもスイスイ食べられて元気がでる料理です。首都カイロにある老舗のコシャリレストランで修行を積んだシェフが本格的なコシャリを提供しています。
銀座・日本橋
歴史ある大企業の本社や金融系の会社が多く、40歳以上の男性ビジネスパーソンの比率が高いです。そのため、わかりやすくガッツリしたお肉料理がウケる傾向にあります。特にクリスマスサンタさんのチキンカレーが人気です。
クリスマスサンタさんのチキンカレーは、普通のチキンカレーとは一味違います。丸鶏を専用マシンでお客様にお渡しする直前までローストして仕上げたロティサリーチキンを使っています。そのため、外はカリっと中はジューシーに仕上がった香ばしいチキンとカレーというダブル主演のような料理になっており、普通では味わえない満足感を与えてくれます。
お台場エリア
お台場は、フジテレビなど観光スポット付近にオフィスビルが立ち並んでいます。そのため、観光客向けのランチスポットの比率が多く、ビジネスパーソンをターゲットとする魚系の定食屋などがほとんどありません。こうした要因により、新鮮な魚介を使った海鮮丼がメインのフードトラック「L.L.P」さんが多くのリピーターを集めています。
しらすと海老と焼きサバとアサリが入った海鮮4色丼が特に人気です。ここまで多様な海産物が一度に食べられるランチはなかなかないです。
フードトラック、いつどこにいる?
なるほど、フードトラックの味のクオリティーが高い理由はわかりました。街によって売れるメニューの傾向の違いが顕著なことも。では、いざフードトラックのランチを買いに行こう、と思った時にどこに向かえばいいのでしょうか?
たまたま近所に毎日トラックが出ている、なんて人はラッキーです。フードトラックは、移動できるという特性を生かして、さまざまな場所と時間で営業しているため、誰かからの口コミやネットでの情報を元に足を運んだとしても、お目あてのメニューがない…なんてことが起こりかねません。
そんな時には、アプリで情報収集するのも手です。TLUNCHのアプリでは、いつ、どこに、どんなお店が来るのか一目で確認することができます。今後、雨の日の割引情報などの発信機能やアプリ決済機能なども追加されるとのことなので、チェックしてみても良いかもしれません。
「一生のうちで食事をする回数には限りがあるのだから、ちゃんとしたものを、ちゃんと味わいたい」とは、実践できているかは別として、誰もが考えることのはず。
フードトラックという選択肢が増えることで、すべてのビジネスパーソンのランチタイムがより実りのあるものになれば、と思います。
Source: mellow
(ライフハッカー[日本版]編集部)
元記事を読む
- ブーストマガジンをフォローする
- ブーストマガジンをフォローするFollow @_BoostMagazine_