ワインやコーヒー、バターは体にいい? 悪い? 健康に関する情報がコロコロ変わるのはなぜ?
コーヒーはいま、体にいいんでしょうか? バターはOK? 糖質ゼロのコーラは「死亡率が高まる」? もう「大丈夫」? あまりに多くの情報が飛び交っているため、このように混乱している人もいるでしょう。しかし、ニュースの見出しは決してすべてを語っていません。研究結果を発表する科学者たちは、常に意見を戦わせているわけでも、態度をころころ変えているわけでもありません。
忘れないでほしいのは、健康問題は複雑であることです。私たちは、さまざまな食品、人、物事が気になります。たとえば、コーヒーひとつを取っても、あらゆる疑問に答えてくれる研究など存在しません。研究チームは、1つの問題空間に注目し(無数のクエスチョンマークで満たされた大きな雲を思い浮かべてください)、対応可能と判断した小さな一部を切り取っています。「大規模」な研究でさえ、取り組んでいるのは1つの小さな疑問、ただ、被験者の数が多いのです。
バターやコーヒー、ワインについて研究している科学者は山ほどいます。多くの人が、身近な食品として、答えを知りたがっているためです。だからこそ、数え切れないほどの研究チームが雲の一部を切り取り、それぞれが独自の答えにたどり着いています。各チームの答えは必ずしも一致していませんが、それ以前に、すべてのチームが同じ疑問に答えようとしているわけではありません。
ワインを例に取ってみましょう。ワインには「レスベラトロール」という抗酸化物質が含まれており、いくつかの健康効果があるのではないかと考えられています。そのため、レスベラトロールに注目する研究チームもあるでしょう。ワインそのものではなく、レスベラトロールを含むサプリメントの効果を研究しようとするかもしれません。いっぽうで、ワインにはアルコールも含まれており、アルコール自体にも潜在的なリスクと利点があります。そのため、アルコールに焦点を当てる研究チームも現われるでしょう。
しかも、研究チームはそれぞれの方法で実験を計画します。レスベラトロールをマウスに摂取させるチームもあれば、聞き取り調査を行なって人々がワインを飲む量を調べるチームもあるでしょう。さらに、導き出そうとしている結果が異なる可能性もあります。早死にや心臓発作に注目する場合もありますし、採血してコレステロール値を調べるだけのチームもあるでしょう。
これほど研究が多様であれば、さまざまな結果が存在するのは当然だと思いませんか? しかし、皆さんは研究者ではありませんから、おそらくニュース記事をさっと読み、その情報をもとに赤ワインを脳内の「健康に良い」ボックスと「健康に悪い」ボックスに振り分けるだけでしょう。これは決して怠慢ではありません。皆さんは一般市民として、夕食時にワインを飲むことの善悪を判断できればそれで十分なのです。
たとえ複数の研究チームが同じ疑問に答えようと試みたとしても、同じ結果が出るとは限りません。あなたが好きなスポーツチームも、いつも試合に勝つわけではありませんよね。勝ち負けに一喜一憂するかもしれませんが、1勝しただけで、ほら、やっぱり史上最強のチームだったとは思わないはずです。そうあってほしいと願うかもしれませんが、もっと勝利を重ね、勝率が上がり始めるまでは確信できないでしょう。
科学の世界にも、「勝敗の記録」に相当するシステマティック・レビューという手法があります。過去の研究結果を集計し、評価を行うものです。そして残念ながら、システマティック・レビューがニュースの見出しを飾ることはめったにないのです。
Image: Regina Roig-Romero/Flickr
Reference: Wikipedia
Beth Skwarecki – Liehacker Vitals[原文]
(訳:米井香織/ガリレオ)
元記事を読む
- ブーストマガジンをフォローする
- ブーストマガジンをフォローするFollow @_BoostMagazine_