連載形式で、プラモデルの作り方を教わっていく本シリーズ。講師のオオゴシトモエさんは、数少ない女性プロモデラーとして活躍中で、なんとこれまでに制作したプラモデルは1,000体以上。2000年にプラモを作る企画に参加したことがきっかけでプラモデルの魅力に開眼。以来、メディア露出のある初の女性プロモデラ―として多方面で活躍を続け、今年で18年目を迎える。
>>今から始めるプラモデル作り 第1回 工具・塗料編<<
>>今から始めるプラモデル作り 第2回 接着編<<
>>今から始めるプラモデル作り 第3回 スプレー塗装編<<
>>今から始めるプラモデル作り 第4回 部分塗装編<<
>>今から始めるプラモデル作り 第5回 デカール貼り編<<
ここまで、1/35ミリタリーミニチュアシリーズ「アメリカ戦車 M4A3E8 シャーマン イージーエイト(ヨーロッパ戦線)」を使って、プラモの組み立てや塗装などについて紹介してきた。だが、ここまでで満足しないでほしい。戦車模型はここからが真骨頂。綺麗なままより、使い込まれた風合いや汚し塗装をほどこした方が圧倒的にリアルな雰囲気が出るのだ。
そこで、今回はいよいよプラモ作りの最終工程である「汚し塗装(ウェザリング)」について紹介していく。「ウェザリング」は模型の専門用語で、「Weather(天候)」が語源。雨風にさらされて汚れたり、使い古された雰囲気を塗装によって意図的に演出する作業だ。説明書がある組み立てと違い、自らの想像力のみが頼りとなる「ウェザリング」は一見、難しそうだが、一回やってみるとこれほど楽しい作業はない。「この戦車はこういう所を走っていたから」「どんな汚れだったんだろう」と思いを馳せながら、思い切って汚していこう。マイ戦車の完成はもうすぐだ。
1. ウォッシングで陰影をつける
ウェザリングの最初の工程、「ウォッシング」を行う。「ウォッシング」はウェザリングのテクニックのひとつで、薄めた塗料でプラモデル全体を洗うように塗装することから「ウォッシング」と呼ばれている。意図的に塗料のフィルターを乗せることで、全体に統一感が出たり、ミゾに影色が入ることで立体感が出る。
使用する塗料は、前回とおなじくタミヤエナメルの「XF-1 フラットブラック」と「XF-57 バフ」。「この色を絶対に使わなければいけない」という決まりはないので、影色や砂ぼこりなど、仕上がりのイメージに合わせて塗料を選ぶとよい。今回は、第4回の部分塗装で使用した塗料を活用している。
これを塗料皿に適量出したら、スポイトでエナメル溶剤を加えて濃度調整を行う。
汚しの最初の工程であるウォッシングは、暗めの塗料でプラモ全体を洗うように塗装することで、そのままだと分かりづらいモールドの陰影をハッキリさせることができる。重力(雨の流れ)を意識して、筆を上から下へ動かして、自然な汚れの流れを描くように塗るのがポイント。
しっかりと乾燥させた後、溶剤を含ませた筆を使って、濃すぎる部分や筆跡がくっきり残ってしまった部分の塗料を落として調整するとより自然な仕上がりになる。
2. ドライブラシ
ドライブラシは、筆にふくませた塗料をいったんふき取り、かすかに色がつく状態にしてから軽くこすりつけるように塗るウェザリングテクニック。
車体より明るめの塗料を重ねて凸部分を強調していく。ドライブラシをほどこすことで、凸部分にハイライトが加わり、立体感を強調させることができる。
筆に塗料をつけたら、ティッシュにこすりつけて塗料を落としてから使う。ティッシュに塗料がうっすらとつくかつかないかくらいまで落とすのがコツ。
こうしないと塗料がつきすぎてしまうので、忘れないようにしよう。準備ができたら、プラモの突起した部分のヘリやフチに筆を擦り付けるようにして動かしていく。
筆先をやさしくこすりつけるように動かし、何回も塗り重ねているうちにだんだんと塗料が乗り、エッジが際立つようになる。微量の塗料を少しずつのせて造形を際立たせる技法なので、根気強く何回も繰り返すのが大切だ。地道な作業に心が折れそうになるかもしれないが、汚し塗装のいいアクセントになるので、焦らずじっくり行っていこう。
3. いよいよ粉を使った汚し作業へ!
塗料を使った汚しテクニックのほかに、パステルと呼ばれる粉を使って砂や泥の汚れを加えていこう。粉というと、扱いにくそうなイメージがあるが、近年は便利なツールが発売されている。タミヤのお手軽ウェザリングツール「ウェザリングマスター」を使用する。
化粧品のアイシャドウのようなツールで、付属の筆で塗りつけて汚していく。失敗してもすぐに拭き取れるので初心者にはおススメだ。プラモ店などで簡単に手に入るので、ぜひ試してみてほしい。様子を見ながら少しずつ塗料を重ねていくこと。
この時、綺麗に塗ろうとせずわざと色ムラをつくるとリアルな泥汚れになる。「汚し」のコツは、走行した時にどのように泥が撥ねるかを想像しながら塗っていくこと。地面と接するキャタピラや、地面に近い転輪にはかなり泥汚れがつくため、そこは重点的に塗っていこう。汚れには理由があるので、ただ闇雲に汚すのではなく、「どういう状況でよごれたのか?」を考えながら汚していくことで、リアルな汚れを再現できる。戦車は実際の写真もインターネットなどで見ることができるので、それを参考に塗り進めるのもいいだろう。
4. 最後まで気を抜かずにスプレーを
汚し作業が最後まで完了したら、十分に乾かしてからつや消しスプレーを吹き付けておこう。これにより、ウェザリングマスターの粉を定着させたり、全体のツヤを統一することができる。吹き付けすぎると白くなってしまうので、様子を見ながら徐々に吹き付けていこう。
5.リアルな汚れがプラモを戦車に変えてくれる
こちらが、正真正銘、全工程が終了したアメリカ戦車 M4A3E8。リアルを追求して施された汚れが、限りなく本物に近い雰囲気を醸し出している。汚しは戦車プラモの醍醐味。せっかくプラモ作りを始めるなら、第1回目からを参考にここまでチャレンジしてみてほしい。きっと、子供のころとはまた違うプラモの魅力に気が付けるはずだ。
次回は番外編としてオオゴシさんと一緒に街をジオラマにプラモ撮影へ! スポットを選べば、本物の戦車を見上げているかのような大迫力の写真が撮れるので、ぜひこちらも楽しみにしていて欲しい。
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