友人からの健康情報を信頼してはいけない理由
世の中は、デタラメなアドバイス、デタラメな科学、デタラメな理屈に満ちあふれています。そして残念ながら、そのうちのいくつかは、あなたが信頼する人たちからもたらされます。たとえば、次のようなやりとりを見てください。
Cherry juice is effective. Health shops sell it. Definitely worked for me. Good luck.
— Bobofinch (@bobofinch) 2017年8月31日
“Clare Groves @ClareTheScot2
夜、足がけいれんするのに悩んでいます。最近は、それで4回も目が覚めてしまいました。水をたくさん飲むようにしていますが、ほかに何をすればいいかわかりません。
Bobofinch @bobofinch
チェリージュースが効果的です。 健康ショップで売ってますよ。私にはとても効きました。うまくいくといいですね。”
ある意味では、私たちの誰もが自分の健康についての専門家だといえます。誰もが、自分に何が起きていて、その状況を変えるために何をして、その結果がどうだったのかを知っています。ある食事法を試してヒザの痛みが消えた経験があれば、そのやり方がどれほど効果的かというストーリーが頭の中で出来上がります。そして、相談してくる人全員にその話をすることになります。
しかし、逆の立場から見るとどうなるでしょうか。あなたがヒザの痛みを抱えていたとき、友人から乳製品をやめればいいといわれたことはありませんか? どれほど友人の話に説得力があったとしても、それはたった1つのデータにもとづいた意見にすぎません。友人に起きたからといって、あなたにも起きる保証はどこにもないのです。
心の底では、あなたもこのことを理解しています。「乳製品をやめれば関節炎が治る」「MMRワクチンが自閉症を引き起こす」「ホメオパシーで風邪が治る」こうしたことが真実かどうかを確かめたいなら、たった1人の意見ではなく、大勢の意見を聞く必要があります。友人の話にいくら説得力があってもです。
とはいえ、相手はあなたの友人です。そしてあなたはその人を信頼しています。また、友人が食事法を試す前と後の様子を知っていて、たしかに事態が改善したのを見ているかもしれません。もしそうなら、友人の話を信じて何がいけないのでしょうか?
認知バイアスがあるから
私たちは思考するときに近道を通ろうとします。怠慢だからではなく、賢いからです。目にする情報すべてについて、事実確認を行なっていては、朝、寝室から出ることすらできなくなります。ですので、私たちは多くの思考プロセスを自動操縦モードで実行しているのです。
私たちを正気に保つためのこの戦略は、認知バイアスと呼ばれています。これは決して悪いものではありません。ただ、その存在に気づき、それが役に立たない場面を理解しておくべきだということです。
たとえば、確証バイアスとは、世界はこうであるという認知モデルをいったん獲得すると、そのモデルに適合する情報ばかりを集めるようになる傾向のことです。多くの情報がそのモデルに合致し、一部に合致しない情報があるとき、合致しない一部を無視してしまいます。
朝目が覚めて、窓の外に以前そこになかった木の枝が見えたとしても、適当なつじつま合わせを考えます。たぶん風で枝が曲がったんだろう。たぶん木が伸びて気がつかないうちに枝がそこまで来たのだろう。このように、いつもと同じ庭がある、いつもと同じ家に自分はいるのだというモデルを決して手放そうとはしません。
あなたに、たとえばジュリーという友人がいて、とても信頼できる人物であれば、可能な限りその人の言うことを信じようとするでしょう。ジュリーがビタミンCサプリのおかげでこの冬はまったく風邪をひかなかったと言えば、その言葉を素直に信じます。
ここに、ほかのバイアスも加わります。アンカリングバイアスは、最初に聞いた情報を信じ込み、その情報にもとづいて後から入ってくる情報を判断してしまう傾向のことです。利用バイアスは、遠くにいる人たちに関する統計よりも、身近な友人たちの体験談を信じる傾向のことをいいます。ある出来事が複数回起きると、そこからパターンを導き出してしまうクラスターの錯覚というものもあります。たとえば、3人の友人から、鍼治療で頭痛が治ったと続けて耳にしたとき、そこから1つの結論を導いてしまいます。また、過去にした選択と同じ選択をし続けたくなる選択支持バイアスも忘れてはいけません。
こうしたバイアスはすべて、あなたが友人のアドバイスをどう受け止め、自分の経験をどう解釈するかに影響を与えます。たとえば、あなたが自分の子どもにワクチンを打たないと決めたとすると、そうすることがほかの人にとっても正しいことなのだと主張し、説得しようとするでしょう。
Have you tried yoga? Sister in law had a nasty back injury. Thru yoga she has been able to alleviate most of the pain.
— zaraki_senpai (@zarakikid) 2017年9月3日
“?Beergnome? @beergnome1st
腰痛で寝たきりになっています。そしたら妹が何を勧めてきたと思う?
浄化だって。。
zaraki_senpai @zarakikid
ヨガを試しましたか? 義理の妹がひどい腰痛になったことがあります。ヨガをしたら、痛みがほとんどなくなりましたよ。”
バイアスのせいで見えなくなるもの
個人の体験談は非常に限定的な情報です。1つのことを試した、1人の体験に基づく、たった1つの意見にすぎません。体験談に頼れば、以下の要素が見えなくなってしまいます。
交絡因子:あなたの友人はカロリーを減らし、野菜を多く食べ、運動を増やし、リラックスと睡眠のための時間をふんだんに確保しました。ところがその友人は、体重が減ったのはグルテンをカットしたおかげだと信じています。
プラシーボ効果:何らかの方法を試して効いてほしいと願っていると、そういう目で見るようになります。「どうやら効いているみたい?」とは考えても、「たぶん効いていない」とは考えなくなるもの。科学的実験は、被験者に本物の薬を飲んだのか、プラシーボを飲んだのかを知らせずに行ないます。そうすることで効果を客観的に評価できます。一方、あなたの友人は、客観性を担保する方法を持ってはいません。
問題の原因:あなたが椎間板ヘルニアで腰を痛めていて、私が肉離れで腰を痛めているとしたら、私が痛みをとるために何をしたかは、あなたにはほとんど関係がないはずです。私に効いたことは、あなたには効かないでしょう。
そのほかの人たちはどうだったか?:「効果には個人差があります」と小さな文字で書かれたダイエットサプリの広告を考えてみてください。そのサプリを試した人のうち、大半は少ししか体重が落ちないか、まったく落ちなかったはずです。むしろ体重が増えてしまった人もいるでしょう。しかし、企業は最も体重が落ちた人たちを選んで宣伝に使います。同じように、インフルエンザの予防注射を受けたけどインフルエンザにかかってしまったという友人も、典型的なケースを表しているとはいえません。
体験談にはこうした欠陥があるので、個人の体験だけを聞いて堅実な結論を導くことはできません。かわりに、全体を科学的に見ることが重要です。インフルエンザの予防注射は完璧ではありませんが、リスクよりもメリットが上回っています。ヨガが腰痛に効くことがありますが、すべての痛みを和らげるわけではありません。食事プログラムWhole30は、食物アレルギーや感受性を検査するのには役立ちますが、そのために不必要なほど複雑な手続きが必要となります。
友人の言うことは信じる、でもアドバイスは聞かない
難しいことなのはわかります。友人から「ヨガを試したか」と聞かれるたびに、「そうじゃないだろ!」と食ってかかれということではありません。
友人が感じたこと、体験したことはそのまま素直に信じてあげてください。ずっと体調が悪かった人が、今は元気になっているなら、すばらしいことです! おめでとうと言って応援してあげましょう。結局のところ、体調がどうなのか一番よくわかっているのは、友人自身なのですから。
しかし、ヨガが友人に効果があったとしても、あなたにも効果があると結論づけるべきではありません。友人のアドバイスは少し割り引いて考えてください。もちろん、あなたがもとからヨガを試したいと思っていたのなら、その情報に背中を押してもらえばいいのです。そして、そのアイデアをかかりつけの医師や理学療法士に伝え、確かな専門性を持つ人からのアドバイスを仰いでください。
また、個人的な体験を裏付けるために、科学的研究を持ち出してくる人にも注意が必要です。そういう人はたいてい、自分の主張を支持するたった1つの研究をクローズアップして、それを反証する何千もの研究を無視しています。自分たちの食事法やアプローチが健康になる唯一の道だと主張する多くの人はこのパターンにはまっています。彼らはみな、科学的研究を引用しながら、それぞれまったく違った結論を主張します。情報源を偏見のない目でチェックして、彼らの主張をきっちりと検証してください。
再検証してみる:誰かから聞いた、非常に説得力のある体験談を思いだしてください。あるいは、自分が過去に体験した、そこからある結論を導き出したものを考えてみます。そうした友人の体験談や自分の体験を現在の視点で再評価してください。まだ説得力がありますか? もうありませんか?
Image: Pressmaster/Shutterstock.com
Source: Twitter(1, 2), Whole30
Beth Skwarecki – Lifehacker US[原文]
(訳:伊藤貴之)
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