年齢別、子どものスマートフォン使用に関するルールの決め方
思春期の若者にとって、携帯電話を持つことほど解放的な体験はありません。
私が初めての携帯電話Nokia 6610に感じていた絆は、共有結合のように切っても切り離せないものでした。ゲームやソーシャルネットワークはもちろん、そもそもインターネットがなかった時代の話です。
ましてや、今は携帯電話からのインターネットアクセスが10代の若者にとって不可欠な体験となっており、インターネットに初めて触れる年齢は年々低下しています。
背景に応じた時間制限を
Influence Centralが2016年に実施した調査によると、米国人が初めてスマートフォンを手にする平均年齢は、10歳をちょっと上回るころだそう。その用途は、両親との安全確認だけではありません。そして、調査を受けた子どもの約半数が、12歳までにSNSのアカウントを少なくとも1つ所有しているそうです。
スマートデバイスの普及が、保護者に固有の課題を突き付けています。スクリーンタイム(ゲームやスマートフォン、テレビなどを見ている時間)の増加が、家庭内の争いの種になりうるのです。ロイターの記事によると、3分の1の家庭において、デバイスの使用時間についての口論が毎日行われているそうです。
それに、まだ言葉も話せないような1、2歳児が直感的かつ上手にデバイスを操作している様子を見ると驚きますが、一律に制限をかけるのはあまりよくないようです。それよりも、子どもの年齢、性格、個別のニーズに基づいてアプローチを変える必要があります。たとえば、教育的なものを見たがっている場合や活発になるようなゲームにはまっている場合など、状況によってスクリーンタイムの制限時間は変えましょう。
また、柔軟性は別の意味でも大切です。子どもの成長に伴い、スマートフォンは象徴的な重要性を持つようになります。それを完全に禁止してしまうと、社会性やアイデンティティの発達が妨げられるなど、あなたが思うよりも重大な影響を与えかねないのです。
デバイスの使い方はそれぞれ
Associated Pressのシニアリサーチサイエンティストで、15年間にわたりテックとティーンの接点を研究してきたAmanda Lenhart氏は言います。
“10代にとって、スマートフォンやタブレットは色々な意味で「セーフティデバイス」であることが多いもの。親が禁止をしたら、彼らはその日の情報から遮断されてしまいます。”
そのような社会的機能があるため、Lenhart氏は10代がデバイスに没頭している状態を「中毒」と呼ぶのを好みません。その代わり、この現象を「差次感受性」と呼んでいるそうです。大人にとってのアルコールのように、デバイスで穏やかになる10代もいれば、自分をコントロールできなくなる10代もいるのです。
“これらのプラットフォームの多くは、ゲーミフィケーションを盛り込むことで、何度でも使いたいと思わせるように作られています。彼らはそうやって儲けているのです。ですから、子どもがそのような仕組みをどう解釈するか、責任あるデジタル世代の大人になるようにどう導くかは、親の手にかかっています。”
そのためには、また別のテクニックが必要です。そこで、子どもを3つの年齢層に分けて、各層の保護者にデジタルとの付き合い方をインタビューしました。
0~6歳:監視して、制限を設ける
6歳以下で自分の携帯電話を持つことはないでしょう。とはいえ、子ども向けの動画やアプリが大量に存在している今、デバイスを使う機会は増えています。
4歳と2歳の2人の娘の母であるMelissa Frameさんは、4歳の長女がすでにデジタル面での自立を強く求め始めていると言います。
“長女は、大人が箱からおもちゃを出して遊ぶ動画に興味があります。ときどき動画の中で、人形にうんちやゲロなど、下品なことをさせているのが本当に腹立しくて。ですから、長女が動画を見ているときは、2歳児よりも近くで監督しています。”
Frameさんは、制限時間を設けて見過ぎを防いでいます(1日20分前後)。また、いいことをしたときのご褒美として動画を見せているそうです。
“それらの動画の大半は、教育的な価値はありません。ですから、どちらかというとご褒美として使っています。”
また彼女は、普段からかわいいビデオを見つけておいて、どうしても家事を終わらせなければならないときに、子どもたちに見せるようにしています。
“「今からサメの赤ちゃんの動画を見たい人―?」と言うんです。それを見せておけば、見せたくない動画を見せずに済みますしね。”
6歳の息子と4歳と3歳の娘を持つ父親Matt Mundy氏の場合、責任あるデバイスの使用について教えるには、自分が手本にならなければならないと言います。
“自分自身がどれだけスマートフォンに集中しているかを認識するように心がけています。自分が使っているのに子どもたちに使うなと言うのは、偽善だし不公平だと思うから。”
つまり、家族といる時間や我が子にデバイスを使ってほしくない時間は、親自身も使いたい気持ちと戦わなければならないのです。
“家族で一緒にいる時間や食事中などは、携帯を出さないようにしています。また、寝る前の落ち着いている時間帯は、子どもたちを刺激し過ぎないように気をつけています。”
6~12歳:重要性を理解する、監督は続ける
前述の研究によると、この年齢の間に親が携帯電話を買い与えることが多いようです。これに伴い、親としての役割も毎日の規制者から定期的なアドバイザーへとシフトします。
Mundy氏は、息子がこの年齢に近づいているため、デバイスを買い与える日に向けて心の準備を進めているそうでうす。
“これから数年は、判断に悩むでしょう。携帯はパンドラの箱ですからね。とはいえ、持たせないという選択肢はありえません。”
小学校高学年や中学校の初期は、社会的コミュニティーの線引きがされる時期です。その中で我が子の役割に携帯電話を追加するのでれば、彼らとデバイスとの付き合いは家だけでないことを肝に銘じなければなりません。
子どもに携帯電話を持たせたなら、各家庭で具体的な基本原則と期待を決める時期です。できるだけ詳細に決めるとともに、一貫性を忘れないでください。家で家族との食事中は禁止、宿題が終わるまでソーシャルアプリやゲームは禁止、どこかから出発するときや到着するときはメールをすること、などのルールを決めましょう。
また家庭のルールを決めると同時に、学校のルールも確認してください。学校のルールは、年齢によって変わることが多いようです。小学校と中学校の両方で教員経験のあるSuzanne Poppkeさんによると、中学校に上がる時期にソーシャルツールとしてのスマートフォンの重要性が高まるそうです。
Poppkeさんによると、中学ぐらいになると、オンラインコンテンツへの崇拝が人生のすべてになるのだとか。
“彼らの話題はいつも、デジタルの世界のことばかり。(対面での)社会的交流のほとんどが、オンラインコンテンツを中心に回っているみたいです。SNSで見つけた人を偶像化したりしています。”
そのため中学校は、携帯電話に対する規制が厳しく、学校外での使用まで規制していることが多いようです。Poppkeさんの中学校の場合、年度のはじめにスマートフォンを学校に登録し、学校では常に決められた箱に入れておかなければなりません。このような厳しい規制は、反動として家で使いたくなる気持ちを助長します。ですので、家庭では1人1人に合ったルールを決めてください。その際、10代にとっての携帯電話の社会的価値を忘れないようにしてください。
最近の10代は、オンラインで起こっている文化的基準によって結束します。つまり、インターネットは彼らの社会性の発達やアイデンティティの育成に欠かせない域へと達しているのです。そのためPoppkeさんをはじめとする教員は、新クラスでの友情を深め、主体性を保つために、デジタルカルチャーを積極的に利用しているそうです。
これは、親にとっても有効なテクニックです。携帯電話が社交ツールとして不可欠な年齢に達したら、規制はいっそう難しくなります。できるだけ最適な基本原則を作るのはもちろんのこと、親自身も勉強が必要です。10代はどんなコンテンツを見ているのか、それが彼らの社会性にどう働くのか。
彼らの好きなYouTubeチャンネルを見尽くしたり、ブラウザーの履歴をすべてチェックする必要はありません。たとえば、彼らにとってのオンラインのヒーローは誰なのかを聞いたり、好きな動画を一緒に見せてもらったりするだけでも、彼らが見ているものや彼らのオンラインでの人格を知ることができるでしょう。
それに、本当に不適切で絶対にアクセスさせたくないと思うコンテンツがあるなら、積極的な対策としてフィルターをかけることもできます。Net NannyやQustodioなどのサイトでは、ブラウザの設定変更や時間制限のかけ方のほか、露骨な素材、下品な言葉やポルノから若者を保護するための通話の追跡やSNSのモニターサービスを提供しています。
これらのサービスは家族のPC、ラップトップ、デバイスなどすべてに使えるので便利ですが、お金もかかります。その点、GoogleのFamily Linkはフリーですが、13歳以上だと自分で制限を変えられるところが議論の的になっています。
テック通の10代は、大きくなるにつれて自分でフィルターを回避する方法を見つけるようになります。それに、フィルター機能には明らかにやり過ぎなものもあります。たとえばQustodioでは、子どもがAndroid端末を使って送信したメールを親が読めるサービスがあります。ですから、それらのサービスは決してあなた自身の認識や関与の代わりにはならないことを覚えておいてください。
コンテンツ、使用時間、データなどに制約をかけるかけないにかかわらず、Lenhart氏の言う「責任あるデジタル世代の大人」へと我が子を導くには、オンラインでの彼らのアイデンティティを認めることが必要です。携帯電話はもはや、雑念でもご褒美でもなく、彼らの人間性を育むためのツールなのです。
12~18歳:徐々に信頼し、デバイスを使わないアクティビティを設定する
中学校が終わり高校が始まると、子どもたちはオンラインでもオフラインでも、社会的アイデンティティを深め、拡大する時期がやってきます。12歳までにクラスメートの大半が携帯電話を手にするため、持っていない子には仲間からのプレッシャーが集中します。
高校に通う14歳の娘を持つManny Bocchieriさんはこう言います。
“うちの娘がほしいと言いだしたのは、6年生のはじめ。クラスのみんなが持っているんだよと。最初は非常時の連絡用としてプリペイド携帯から始めたのですが、年々スマートフォンのプレッシャーが高まって。プリペイド携帯じゃ写真が撮れないのが不満だったみたいです。12歳のときにこっちが折れて、古いiPhoneをあげました。”
中学校は、コミュニティ形成の重要な時期。この期間に、社会的集団の中で自己を表現する方法を学びます。子どもたちはどんどん家庭外の領域にも参加したがるようになります。
Bocchieriさんは言います。
“実に扱いにくい問題です。娘は友達と出かけ、多少のお金も持っています。集団の一員として、人生を公開し、自己表現をしたがります。私たちは、たとえるなら深い海で立ち泳ぎする彼女を信頼しなければなりません。しかも、来年には海がもっと深くなるのが目に見えているのです。”
管理はやめても、一部のルールは続けることが重要です。Bocchieriさんは、娘のSNSのプロフィールはすべてフォローできるようにすることと、緊急時に連絡が取れるよう、バッテリーが20%を切ったときは電話を使わないようにすることを義務付けているそうです。
でも、それは必ずしもうまくいきません。この年ごろは、ルールの限界に挑むものだからです。それに、Snapchatのようなアプリは、親が見えない場所での会話を提供しています。言うまでもなく、若い人のほうが新しいアプリに順応しやすいので、彼らは常にフィルターの1歩先を行っています。
これらの要素が相まって、もっと大きな問題をもたらします。スマートフォンが彼らの社会性にとって重要であるのはいいとしても、彼らの大切な時間が大幅に奪われるのです。Lenhart氏は言います。
“友達とつながっていたいというのは合理的な欲求ですが、親としては我が子がどれだけ自分をコントロールできるのかを知っておかねばなりません。”
12歳から18歳の子から完全に電話を取り上げることは、次のような理由で難しいとLenhart氏は言います。
携帯を完全に取り上げると、彼らの社会性や情緒の発達を妨げ、未来を危険にさらすことになる。
社会的交流に参加できるよう、共有のコンピューターを使う、友達の携帯電話を借りるなど、けっきょく自分たちでクリエイティブな方法を見つけて制約を回避する。
10代の子のデバイス使用時間を減らすには、受け身よりも積極的な対策が効果的です。Bocchieriさんの場合、こうしているそう。
“娘が何かの趣味に興味を示したら、即座に対応して関心を失わせないようにします。たとえばドラムをやりたいと言ったら、すぐに教室を予約して、ドラムスティックを買い与えるでしょう。”
ここで有用なのが、デバイスやサービスを使ったデータ量や使用時間のトラッキング。10代後半になると制限は難しくなりますが、あるアプリの使用時間が急増しているのがわかれば、課外活動の時間を増やすように働きかけることができるでしょう。
それでも問題が解決しないようであれば、ハードウェア本体やキャリアにも、干渉し過ぎない方法が用意されています。Androidには、iPhoneよりも安価かつカスタマイズが容易なモデルがたくさんあります。キャリアでは、VerizonとAT&Tが10代向けのプリペイドプランを展開しています。これを利用すれば、WiFi以外でのデータ量、使用時間、メール、購入などに制限をかけることが可能です。ただし、このようなプランはWiFiを使用してのデータ量への制限はかけられません。そのため、自宅でのデバイス使用に関してはやはり、監視やフィルターのサービスを使う必要があります。
自分を顧みる
上記の方法をどれだけ試しても、親自身が頻繁に携帯をチェックしているようでは子どもに響くはずがありません。
年齢を問わず、デバイスを使わない時間の重要性を強調しましょう。夕食中は携帯を使わないというルールを決めるのであれば、年齢を問わず子ども全員に同じルールを適用してください。もちろん、親自身も例外ではありません。デバイスフリータイムは、誰も侵してはならないのです。
上記の何をやってもダメなら、あなたの子がインターネットの津波から逃れるのは難しいようです。私の使い古しでよければ、Nokia6610を安価でお譲りしますよ。
Image: arrowsmith2 / Shutterstock.com
Source: The Atlantic, Influence CENTRAL, Reuters, Net Nunny, Qustodio, Google, The New York Times, TIME, verizon, AT&T, Lifehacker US
Jesse Hagen – Lifehacker US [原文]
(訳:堀込泰三)
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