コミュニケーションは「後出し」でうまくいく
コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第26回目は「コミュニケーションにおける『後出し』とは?」についてです。
ジャンケンで必ず勝つ方法をご存じでしょうか?
人の心理をついて繰り出す手を考える?
答えはノーです。
もっとも確実に勝つ方法は、後出しです。
相手がパーを出したのを確認してからチョキを出す。
相手がチョキを出したら、グーを出す。
相手がグーを出したら、パーを出す。
当たり前ですが、そうすれば、絶対に勝てます。
でも、「後出し」はやってはいけませんよね。「普通のジャンケン」に限っていえば。
ところが、交渉事や周りの人との会話では、「後出し」は多数のメリットをもたらします。
先に出して負ける人たち
私はこの会話方法を、「後出しジャンケン方式コミュニケーション」と命名して、セミナーや書籍などで7年にも渡ってお伝えしてきました。
それほど、コミュニケーションに良い影響を及ぼすという方法なのです。
具体的に説明しましょう。
一言でいえば、とにかく徹底的に「会話」は後出しをすればいいのです。
コミュニケーションが苦手だという方は、次のように「先出し」をして失敗しています。
「どうもはじめまして。あ、関西出身の方なんですね!関西といえばやっぱり阪神タイガースですよね!私が好きな選手は、ピッチャーの…」
「いえ、広島ファンなんです」
「え…?ああ、そうだったんですか…」
「私、昨日まで富士山に行ってきましてね」
「へー!富士山ですか!登るのはきつかったでしょう。私も3年前、朝5時に出発して、一日がかりで登った時は、本当に大変でした」
「いや、五合目までドライブしただけなんですけどね…」
「いらっしゃいませ。パソコンをお探しですね。こちらの商品がオススメです。ハードディスク容量が小さいのでコストパフォーマンスがとてもいいんです。他にも最新の機能もついていまして、とても便利です」
「いや、高くてもいいから、ハードディスク容量が大きいのが欲しいし、最新の機能はいらないよ」
これらの会話例を見てわかりましたか?
成功しない人は、相手の話をろくにきかず、自分の思い込みで話を進める人がとても多いのです。
相手の伝えたいことや、気持ちを理解しようとせず、すぐに思い込んで、先回りする人に対して、好感を持つ人はいません。
それなのに多くの人は、「自分からしゃべらなければいけない」「沈黙があると相手に失礼だ」と勘違いして、相手の興味のない話をしてしまい、玉砕しているのです。
自分が言いたいことを先に出して、あとから相手の要望や意見を聞くのは、実はとても難しいことなのです。
後出しジャンケンの基本とは?
自分からベラベラと話すのではなく、相手の話した内容に寄り添っていけば、間違いなく相手の気持ちをつかむことができます。
「どうもはじめまして。あ、関西出身なんですね、野球のシーズンが始まりますが、野球はお好きですか?」
「ええ、子供の頃から広島ファンなんです」
「へえー、どんなところがお好きですか?」
「昨日まで富士山に行ってきましてね」
「富士山に?・・・(相手の目を見て沈黙)」
「そうなんですよ、家族でドライブで、五合目まで行きましたが、子供が大喜びでね」
「いらっしゃいませ。パソコンをお探しですね。どんなものをお探しですか?普段はどのような使い方が多いですか?」
「そうだなあ、画像や動画の編集が多いんだよ」
「なるほど、それでしたら、これが一番のオススメの機種です」
このように、徹底的に後出しにこだわっていくと、相手とのコミュニケーションがとてもスムーズになります。
営業でも後出しジャンケン方式
営業でも同じです
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