BEAMSバイヤー鈴木修司さんが「10年後も手放さないモノ」
10年という月日が経つと、いま住んでいる部屋も、立場や環境も大きく変わってくる。ただ、たとえ環境が変わっても「これだけはずっと持っていたい」というモノが、ひとつはある。
そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらった。なぜ、10年後も持っていると考えるのか。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてくる。
BEAMS JAPAN バイヤー 鈴木修司
1976年生まれ。三重県松阪市出身、鎌倉在住。1998年にビームス入社。メンズ重衣料からメンズカジュアルウェア、そして“fennica”の前身である“BEAMS MODERN LIVING”の店舗スタッフ、その後に“fennica”のMD、 “B:MING by BEAMS”のバイヤーを担当、現在は“BEAMS JAPAN”のバイヤーに従事する。
10年後も手放さないモノ
毎朝カフェオレを飲むための『マグカップ』
4年くらい前ですかね……「B:MING by BEAMS」時代に企画した商品で、毎朝、カフェオレを飲むときに使い続けているマグカップです。
新たな企画として“朝ごはんのセットを作ろう”というときに、僕の中でなんとなく朝のイメージとして出てきたのが「コーニッシュウェア」だったんですよ。イギリスの人が見たらすぐにわかると思うのですが、日本でいうところの「万古焼の急須」のような、イギリス家庭の風景として定番中の定番が、この水色の縞柄のデザインなんです。懐かしさを感じるデザインというか。
それを「有田焼」にアレンジしたらどうなるだろうと思って企画しました。「大日窯」という家族経営の小さな窯元があって、古典的な焼き物をずっと作り続けているのですごく気に入っていたんです。そこにお願いして作ってもらいました。
有田焼の染め付け的な和の要素もあり、イギリスの日常的な雰囲気も混ざっていて、和洋両方いけるところもいいんですよね。あと焼き物にしては丈夫で、機能的にも僕の普段の生活にハマっているので、これは間違いなく、10年といわずずっと使い続けるでしょうね。
割れちゃったりしていま2代目ですが、割れたモノもまだ使いたいので、というか使えるので、中学生の息子のペン差しとして活躍しています(笑)。
定期的にインスタで朝ごはんを投稿するという鈴木さん。一番好きなパンは「パン・オ・ショコラ」「アップルパイ」とのこと
持ってみるとわかると思いますが、この重量感もたまらなくいいんですよ……。大好きなパンと、このマグカップになみなみのカフェオレを入れるのが毎朝の決まりです。やっぱりこのちょっと大きめの、絶妙な「量」がいいんですよね。
秋ごろに「BEAMS JAPAN」で復活させる予定です。ぜひお楽しみに。
温泉旅館のような“音”がたまらない『江戸結桶』
マグカップは毎朝のおともでしたが、こちらは毎晩、お風呂に入るときの「一日の締め」という気持ちになるアイテムです。
深川でおひとりでやられている桶屋「桶栄」さんが、全部手作りしている「江戸結桶」。
市販されているような普通の桶は、基本、部材は機械で作って組み立てるときだけ手で作るんです。でもこの「結桶」はほぼ手作りで、昔ながらの桶屋さんと同じく部材をカンナなどで削って作っているんですよ。
僕の家は日本の古いつくりの家屋なのですが、風呂が2階にある関係上、水漏れなどを考えて、ユニットバスなんです。
ただ、このユニットバスでさえも、この桶に変えるだけで雰囲気が変わります。何が変わるって、想像つくかもしれませんが、その音です。水を張ったりして使って、置くだけで、温泉旅館に来たような音がするんですよ。ましてや風呂の中……いい感じに響きますからね。ほんと音がいいんです。
ポコって置いたり、ちょっとした音でも、それだけで全然気分が変わりますよ。
2年ほど使っていますが、未だにヒノキの香りは持続していて。毎日使っているので傷まず綺麗なんですよ。一方で銅の部分は経年劣化を楽しんでます。
木の製品はカビが生えやすいっていうイメージがありますが、使い方次第で変わりますよ。うちで言うと風呂場の窓際の段差があるところに逆さにしてかけておくだけで、全然大丈夫ですからね。水を入れたままだったりすると2~3日でカビが生えますけど。
ただこうしたことが「日本が高温多湿の環境」であることだったり、日本にいるということを忘れないし、季節感も感じられるんですよね。みんな使えばいいのになぁ。
鋼のにおいが落ち着く『種子島産のはさみ』
僕、「刃物」が好きなんです(笑)。はさみといえば博多か種子島が有名ですが、このはさみは種子島のもの。大中小の3サイズ全て持ってます。
これ、大サイズは1万5000円くらいするんですよ。はさみってめちゃくちゃ手間がかかりますからね。2枚の刃を使うし、それを接合する部品も必要だし、調整もあるし……刃物の中で一番手間がかかるとか。はさみを作る職人は博多と種子島以外だとほんと一部、岐阜県の関市とか大阪の境市くらいしかいないようで、貴重なんです。
見てくださいこれ。隙間があるんです。ねじれてるんですよ。良いはさみの証拠です。普通の工作用のはさみはピタッとしていますよね、要は昔ながらのはさみは「ねじ切ってる」んです。切る部分しか交差していない。これがおもしろいんですよね。
刃こぼれしても研ぎ直せば半永久的に使えますし、切ってみると“挟んで切っている”感触があるんですよ。その瞬間も、やっぱりこう……普通のはさみとは気持ちが違いますね。
あと、僕の実家は鉄工所だったこともあり、鉄というか鋼のにおいが落ち着くんです。ちょっと持ってるだけで手につきますからね。小さい時から嗅いでいたにおいなので。たまらない(笑)。
これは余談ですが、3か月くらい前に熊本県の天草に行った時、道の駅の前でお兄ちゃんが刃物の出店をやっていたんです。結構いいものばかり置かれていて、お兄ちゃんに聞いてみると、鹿児島の古い刃物屋さんらしく……。いま店を改装しているから期間限定で出稼ぎしてるんですーって言うんですよ。
そしたらこのはさみの中サイズが売っていて、なんと500円! 中サイズは普通に買ったら8~9,000円くらいしますからね。その時一緒にいた人みんなに「これ絶対買っとけ!」って買わせました。改装なので古い在庫を全部売りさばきたかったんでしょうね、めちゃくちゃめっけもんでした(笑)。
BEAMS JAPAN バイヤー 鈴木修司さんの10年後
今やっていることの延長線上のことですが、日本全国をもっと旅して、各地の魅力をさらに紹介できるようになっていたいです。人の役に立てるような素敵な大人になっていたいですね(まだまだ未熟なので……)。
それと、たまにはのんびりできるような時間や場所を作っていきたい。どこか景色の良いところに別荘なんかあったら、うれしいなと思います。
Photographed by Yutaro Yamaguchi
元記事を読む
- ブーストマガジンをフォローする
- ブーストマガジンをフォローするFollow @_BoostMagazine_