「時間」の哲学を感じる ヴァシュロン・コンスタンタンの新作天文時計
天文学と時計製造は密接に結びついている。スイス最古の時計メーカー、ヴァシュロン・コンスタンタンは今年の国際高級時計見本市(SIHH)で5種の新作天文時計を発表した。特に注目されたのは、開発に5年(内、設計2年)の歳月を要したという「レ・キャビノティエ・セレスティア・アストロノミカル・グランド・コンプリケーション 3600」。1人のマスター・ウォッチメーカーが専任で製作し、世界で1本限定という貴重な腕時計だ。
最高峰の時計技術が集約された同作には、人為的な修正がそれぞれ400年毎、122年毎に1日という永久カレンダーと高精度ムーンフェイズ表示、また「潮位と地球」、「月」、「太陽」の位置関係を示す3D描画を組み合わせた潮汐表示など、数多くの天文コンプリケーションが組み込まれている。中でも注目したいのは文字盤の3本の針から読み取れる「常用時」と「太陽時」の時間表示だ。
「常用時」とは “太陽は1年を通じて一定の速度で赤道の周りを移動し24時間毎に1周する”という仮定の理論に基づく時間表示のこと。一般的に「平均太陽時」と呼ばれるこの理論では1年は365.25日、1日は24時間、1時間は60分に分割される。対して、「太陽時」とは1日の中で太陽の目視可能な軌道に基づいて、所定の場所と時間で計測された時角によって表される時間表示のこと。この「(真)太陽時」と「平均太陽時」との間には最大プラス14分からマイナス16分の差が生じ、両者が一致するのは1年で4回だけとなる。
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