正体はダークマター? はたして“幽霊”は存在するのか、素粒子物理学の視点から考える
幽霊は人間の空想? 素粒子?
スイス・ジュネーブ郊外に設置されている全長およそ8kmの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、我々の物質世界を構築している素粒子の研究に使われています。素粒子とは物質を構成する最小単位の基本粒子。2012年には、存在の予測はされていたものの長年確認されていなかったヒッグス粒子が発見されたことで、非常に話題になりましたよね。
まさに最先端の科学といっても過言ではない素粒子物理学。なんとそんな最先端技術の観点から、テクノロジーとはまったく逆の存在とも言える幽霊の存在を真っ向から否定する科学者が現れました。マンチェスター大学の素粒子物理学特別研究員のBrian Cox氏です。
Live Scienceによると、Cox博士は「もし本当に幽霊がいるなら、LHCですでに発見しているはずだ」とBBC Radio Fourの番組The Infinite Monkey Cageで語りました。以下はRealClearScienceによる書き起こしです。
もし私たちの細胞情報を(死後も)保持し続ける者が存在すると仮定するなら、何によって構成されているのか、どのように我々の体を構成してる粒子と相互作用しているかを正確に特定せねばなりません。つまりLHCの検出を逃れた物質がこの世に存在し、(素粒子研究の基本的枠組みである)素粒子の標準理論を拡張せねばならないということなのです。我々の体内で起こる典型的な粒子の相互作用のエネルギースケールでは想像できないことです
つまり、もし幽霊が存在するならば、現在の素粒子研究の基本的枠組みとして考えられている標準理論上の素粒子と相互作用できるはずだが、そんなものはないと断言しているのです。
ところがその説を聞いた米GizmodoのサイエンスライターRyan F. Mandelbaum氏は大憤慨。普段はオカルトを信じず、超常現象を解き明かす側の彼も、Cox博士の説は馬鹿げていると一刀両断。「僕は幽霊が存在するというつもりはありません、むしろ信じていません。でも未だにLHCによって発見されていない超対称性粒子やアクシオンといったダークマター(暗黒物質)の候補となる理論上の粒子が存在しています」と述べ、人間が発見できていない素粒子で幽霊が構成されているかもしれないとCox博士を批判。
またカリフォルニア大学バークレー校の教授で大型地下キセノン実験(LUX)に参加しているBob Jacobsen氏も、自身は粒子物理学で幽霊を探す研究をしているわけではないので、間違っている可能性もあると忠告した上で「非常に小さく低エネルギーのダークマターの調査は今まさに行なわれている最中です。アクシオンが存在するかどうかはまだわかっていないんです。幽霊がアクシオンで構成されていないと誰が断言できます?」と米Gizmodoに語っています。
なおLHCを保有するCERN(セルン)のウェブサイトでは、アクシオンについて下のように記載されています。
アクシオンは中性で非常に微小な質量で(質量ゼロではない)、従来の物質とは相互作用しません。「奇妙な光子(strange photon)」とも呼ばれ、理論上の予測では、アクシオンが実際に存在するならば、電磁場で光子に変化したり戻ったりすると考えられています。
現れたり消えたりする現象は幽霊そのもの…。幽霊は電磁場の強いところで現れるというのもよく聞く話です。
現在、サウスダコタのLUXや、イタリアのXENON、CERNのCAST(Cern Axion Solar Telescope)といった研究チームがアクシオンなどのダークマターの観測に挑んでいますが、未だ発見されていません。結局今の段階では幽霊が存在するとも、しないとも素粒子物理学の視点からは結論づけることはできないということですね。それに幽霊がLHCの周りに現れるのが嫌なだけかもしれません。プロトンパックが発明されたら一発なんですけどね。
・CERNがヒッグス粒子と思われる新たな素粒子を発見! って実際どういう事なの?
image: Har Gobind Singh Khalsa / Flickr
source: Live Science, The Infinite Monkey Cage, RealClearScience, CERN
reference: アクシオン – Wikipedia, 暗黒物質 – Wikipedia, CAST – CERN
Ryan F. Mandelbaum – Gizmodo US[原文]
(Shun)
元記事を読む
関連記事
舌でテクノロジーが進化する |
運動しないと脳は衰える |
【科学で証明】トレーニングに適した音楽 |
- ブーストマガジンをフォローする
- ブーストマガジンをフォローするFollow @_BoostMagazine_