ヒントはオープンソース。大学生が8万円でホンダ「シビック」を自動運転車に改造!
完全自動運転機能付きのテスラ「Model S」は1,000万円以上するのに、たったの700ドル(約8万円)でホンダの「シビック」を自動運転車に改造する方法があります。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学技術誌MIT Technology Reviewによれば、アメリカのネブラスカ大学4年生のBrevan Jorgenson(ブレイバン・ヨルゲンソン)さんは、オープンソースのハードウェア設計図とソフトウェアを用いてホンダのシビックを改造し、1月下旬に一般道路上でブレーキやアクセル、ステアリングを制御する自動走行に成功しました。
まずヨルゲンソンさんが利用したのは、iPhoneやプレイステーションのハッカーとして有名なジョージ・ホッツ氏のスタートアップ企業comma.aiの「自動運転キット」。同社は、ホンダのシビックやアキュラの車に後付けできる自動運転装置「Comma One」を以前から開発しており、昨年末から999ドル(約114,000円)で販売される予定でした。ところが、米国国家道路交通安全局(NHTSA)から安全性に疑問を呈する書簡が届くや計画をキャンセルしたのです。
そこでcomma.aiはハードウェアの設計図やソフトウェアを、オープンソース化することに(無料で誰でも使えるように)方向転換しました。現在はだれでも既存の車を改造できるよう、ソフトウェア「openpilot(オープンパイロット)」と、それを実行するためのAndroidベースのロボットプラットフォーム「neo」をオープンソースで提供しています。ヨルゲンソンさんはこの技術を利用したわけですね。
comma one flagship car is Honda Civic 2016/17 with sensing package. If you have this car and want to be in our beta, e-mail beta@comma.ai pic.twitter.com/9vCLSnfVOH
— comma ai (@comma_ai) 2016年10月7日
openpilotには、適応型走行コントロールと車線逸脱防止支援システムの2つの安全機能が備わり、連続自動運転が可能となるのは最大6分間まで。その後ドライバー自身で運転しなければ警告を発したり、自動的に減速するようになっています。
また、Androidのスマートフォンで動作するneoには、冷却ソリューションと、車両やロボットで使用されるネットワーク・プロトコルCAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)インターフェースボードも含まれ、オープンソースにするにはもったいないほどの本格派です。
.@AlexRoy144 drove on openpilot v0.2.1, released tonight. https://t.co/OCjeU8EXvL pic.twitter.com/aetmFLCxZm
— comma ai (@comma_ai) 2016年12月15日
そしてヨルゲンソンさんは、OnePlusのスマートフォン「OnePlus 3」にneoを搭載し、改造自動運転車でまずは高速道路を走りました。走行中に右側に寄る不具合も、comma.aiのソフトの修正版で解決し、性能はテスラの自動運転機能オートパイロットの初期版に匹敵するほど。このテストで、おばあちゃんをドライブに連れて行ってあげたんだそうです。
ちなみにヨルゲンソンさんは自作しましたが、テスラの元社員が立ち上げたスタートアップ企業Neodrivenは、組み立て済みのneoを1,495ドル(約17万円)で販売開始しています。
neodriven is now just $999 or 1.0 BTC. Make your car smarter by ordering yours today at https://t.co/PXiXJCm7Pi pic.twitter.com/RXdYZNQOyB
— neodriven (@neodriven) 2017年2月23日
また自動運転とオープンソースの繋がりでいうと、オンライン教育サービスのUdacityも、自動運転車シミュレーターをオープンソース化しています。このシミュレーターでは、どのように機械学習をさせて、どのように車体を自動制御しているのかを学ぶことができるのです。
こうして自動運転に関するいろんなものがオープンソース化され、ヨルゲンソンさんのように自動運転車さえも自作できるようになってきました。そこでもし、世界中の改造マニアが自分の車の改造に乗り出し、今後個人製の自動運転車がそこらじゅうを走り回るようになるとすれば、事故の責任は誰にあるのでしょうか?
米国の電気工学技術学会誌IEEE Spectrumによれば、自動運転に関する法案は世界でも着手されたばかりで、テスラやボルボなどの自動車メーカーは自動運転ソフトウェアの欠陥について責任を負うと公言しているものの、comma.aiのようなオープンソースのケースは、責任の所在は「グレーゾーン」にあるとのこと。
なおcomma.aiが公開しているソフトウェアは、MITのオープンソースライセンスで保護されており、法的責任は原則としてダウンロードするユーザーが負うことになります。GitHubに公開されたオープンソースには、このような免責事項が明記されています。
これはもっぱら研究を目的とするアルファ版ソフトウェアです。これは製品ではありません。あなたの地元の法律および規則に従う責任があります。明示または暗示された保証はありません。
製品だろうとオープンソースだろうと、車両など移動するものにインストールするソフトウェアはすべて、当局による認証を義務付けるなど、専門家は迅速な法律の整備を提唱しています。法が技術の進歩や知識の共有のスピードに追いついていない現在、愛車の改造には「自己責任」の認識が不可欠のようですね。
未来の車だって言ったでしょ。テスラ、保険とメンテナンス料込みのワンプライスで販売開始してた(アジアのみ)
・未来すぎ…。Teslaの完全自動運転の技術デモ動画が公開
image: comma ai – Twitter, udacity – GitHub
source: MIT Technology Review, commaai – GitHub 1, 2, udacity – GitHub, IEEE Spectrum
reference: Neodriven, Udacity, comma.ai Blog
(Glycine)
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