合格率は0.7%。最高段位の剣道家が語る「人生を豊かにする5つの教え」

2017.12.7 17:07 更新

読了時間:7分44秒

合格率わずか0.7%…剣道の最高位・八段先生の5つの教え

Photo: 曽川拓哉

ライフハッカー[日本版]が現在展開しているスポーツ特集。今回はちょっと趣向を変えて、身体だけでなく心も鍛える「剣道」について掘り下げてみます。

日本の伝統文化の一つである剣道は、「人間形成」を目的としており、身体だけではなく心も鍛えることを特徴としています。剣道には段位が存在し、現在の最高位は八段です。その合格率はここ3年間の平均でわずか0.7%。最も難易度が高い試験の一つと言われています。

そんな八段の先生方は、剣道だけではなく人生においても大切なことを教えてくださいます。今回の記事では、私が先生方のお話を聞いて心に残った5つの教えをご紹介します。

真剣に、素直に取り組むこと

柔道、弓道、合気道、茶道、華道、書道……剣道に限らず、武道・芸道には「道」の字がつきます。道は「首(クビ)」をかけて「シンニョウ(ハシル)」と書き、その道の師匠について、生涯にわたって真剣かつ素直に取り組むことを意味しています。

剣道は「道」の文化であり、身体や技だけではなく心の修練も大切にされています。常に反省し、工夫を怠らないこと。課題を持ち稽古に励み、強さの中にも「正しく、美しく、格調高い剣の道」を求めて精進するよう求められます。

“場”を尊重し、心構えを持って物事に臨む

Photo: 佐藤まり子

剣道の道場には神棚が設けられています。これは、道場が「道」を修める神聖なる場所であり、正々堂々とお互いの技の向上と心を鍛え合う場所だからです。このため、道場の出入りや稽古の前後に私たちは必ず礼をします。これは道場ではなく体育館で稽古をする場合も同様です。礼は、修行に臨む者の心構えと言えるでしょう。

驕らず、厳格な礼儀作法のもと、誰にも恥じない公明正大な精神で物事に臨もうという教えです。これは剣道が、技術の向上とあわせて人間修行の場であることを示しています。

海外剣士のなかには「なぜ礼をするのかわからなかった」と言う方もいらっしゃるのですが、修行を続けるうちに納得し、それを受け入れてくださいます。

礼とは「豊かさを示す」こと

Photo: 曽川拓哉

「豊かさを示す」と書いて「禮(れい)」と読みます。剣道で大切にされている「礼」は、自分の心の豊かさを示し、相手を尊重することなのです。礼の字は、剣道が大切にしている「仁義礼智信」の教えにも登場します。なお、仁は相手を思いやる心、義はなすべきことをする正義の心、礼は仁の気持ちを実際に行動で表すこと、智は道理を心得え知識豊かなこと、信は仲間を信じ大切にすることです。

例えば、町道場や部活動では「先輩は後輩の面倒をみて、後輩は先輩の言うことを聞くように」と教えられます。小さな子供であっても、優しく後輩を導き、後輩は先輩から素直に学ぶ気持ちを持っています。大人になると忘れてしまいがちですが、礼を始めとした「仁義礼智信」の心はとても大切なものです。子供たちがこの教えを守って行動している様子を見ると、自分の行いも省みるきっかけになります。

工夫し、自ら行動すること

Photo: 曽川拓哉

「三磨の位」という言葉をご存知でしょうか。物事には「習い」「稽古」「工夫」の三つの要素があり、これを一体的に磨いていこうという教えです。似たような言葉で「守破離」もあります。

この言葉を教わった際、「人間には三つのタイプしかない」とも言われました。その三つのタイプの人間とは、「言われても行動しない人」「人に言われて初めて行動する人」「自分で工夫し自ら動く人」です。

剣道では、師について素直に謙虚に学ぶようにと教えられますが、このように、ただ言われたまま行動するのではなく、何が正しいのか、本質が何なのかを自分で徹底的に考え抜き、工夫して行動するようにとも教えられます。

夢と、勇気を持って生きること

Photo: 佐藤まり子

最後は、夢と勇気についてです。これは80歳近いご年齢で、身体ももう思うように動かない先生に教えていただきました。靴を一人で履くことすら大変なのに、防具をつけて稽古をつけてくださった後にしていただいたお話です。

「人生の基本は「健康」です。「健全な身体に健全な精神が宿る」と言われます。健康に留意しつつ、大言壮語せず、しかし、「夢」を持ってそれぞれの道に向かって進むこと。「儚い夢」というマイナス志向ではなく、前向きな気概で生きてほしい―。」

小さな子供、学生、社会人が正座をして先生の話に耳を澄ます中、ハッキリとした声で「夢は、人に勇気を与えます」と先生が言い切った姿はとても印象的でした。

仕事にしても趣味にしても、夢を持って打ち込んでいる方を見ると、見ているこちらも胸が温かくなり、頑張ろうという勇気や元気がわいてきます。与えてもらうだけではなく、自分自身も夢を持ち、まわりに勇気や希望を与える人間になっていこうという教えです。

いかがでしょう。剣道の稽古の後には、このように先生方が心に残るお話をしてくださいます。今回ご紹介したお話は、ほんの一部です。剣道経験者の社会人の方と話していると、修練を人生の糧としている方が多いように感じます。それは、長く続けている、続けていないに関わらずです。思いやりや夢を持つことの大切さ、続けることの尊さ―これは、実際はとても難しいことです。

特に社会に出て自分の力が及ばないことに出会うと、挫けてしまうこともあります。しかし、綺麗事で終わらせず、長い時間をかけてコツコツと目指していこう、と先生のお話を聞くことで気持ちを新たにすることができるのです。

佐藤まり子|ブログTwitter

フリーのライター&Webディレクター。2017年5月にオランダに移住し開業準備中。オランダでは剣道セレクトショップBUSHIZO海外版をオープン予定。持っている資格は剣道五段、TOEIC880点。趣味は旅行と読書と寝ることとです。細かいことを気にしない性格です。

Photo:曽川拓哉、佐藤まり子

佐藤まり子

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