顧客に「この人から買いたい」と思われるためのコツ
“ビジネスで大きな成果を上げるには、運ももちろん大切ですが、ビジネス書に書いてあるような成功者の思考やテクニックを学べば、自分も成功できると考えるのはあまりに素直すぎです。それができれば、日本国中、年収1億円で溢れかえっています。(「まえがき」より)”
と、正論を主張するのは、『誰でもできるのに、1%の人しか実行していない仕事のコツ48』(西谷信広著、フォレスト出版)の著者。営業スキル開発コンサルテーション業務を中心とするアベライオン株式会社代表であり、直接多くの企業の現場に入って人材の育成を手がけているという人物です。
一流の人が凡人に見せるのは派手なところばかりで、凡人も派手なものしか見ようとしないものだと著者は指摘しています。しかし重要なのは、派手な実績や成功の裏には地道に積み上げた地味な行動があるという事実。しかも地味な行動は時間がかかるだけでなく、結局は実現しないことなどザラにあるものでもあります。
しかしその一方、地味な行動は、ごくわずかであっても確実に目に見える形で早期に成果をもたらすものでもあるのだとか。さらにその積み重ねによって、その他大勢から抜きん出る力を得ることもできるといいます。
本書は、そんな著者が会社員時代に学んだ48のコツをまとめたもの。読むと次のような能力を身につけることができるそうです。
“・ 相手のニーズをつかむ力と論理的思考力が高くなる。結果として、営業力が上がる。
・ 時間が無駄なく使えるようになり、残業時間も減る。
・ ロジカルにまとめる癖がつき、プレゼン資料作成に効果てきめん。
(「まえがき」より)”
きょうは、「交渉」に焦点を当てたCHAPTER 3「交渉を成功に導くトライ&エラー」を見てみたいと思います。
新規顧客を開拓するには?
現代のビジネスシーンにおいて、新規顧客へのテレアポは昔ほど多くないでしょう。しかし、まだまだ営業手法としてそれを活用している企業も少なくないはず。
多くの人は、既存の顧客への連絡はスムーズにできても、新規顧客への電話となると尻込みしてしまいがち。知らない相手に電話するのであれば、不安感が伴っても当然ではあります。とはいえ、既存顧客とだけ仕事をしていればいいというものでもありません。そこで著者は、考え方を変えようと提案しています。「これまで多くの顧客と仕事をして喜んでいただけたのだから、これからはさらに多くの方に喜んでもらおう」と考えるべきだというのです。
そして、そのためのトライ&エラーが新規アポ取り。すでに実績のある製品を売るのであれば、新規顧客であってもハードルは高くないはず。実際に合えば新たな関係も生まれ、そのやりとりのなかで自らの成長も見込めるでしょう。だからこそ、自分の不安を強調してはいけないと著者。「どうしたらもっと多くの顧客に喜んでもらえるか」という視点で考えることが大切だということ。仕事を上手にこなす人は、他の人とは違う切り口で仕事を見ることができるのだそうです。
POINT 1 新規開拓は顧客の立場で
(85ページより)
新規開拓をする際の基本は、まずネット検索。業界や職種にもよるものの、著者は上位100社を調べるようにしていたといいます。次に各社のホームページで、業績、役員構成、製品群などをチェック。そうして相手を知り、自社が扱う製品・サービスをどの部署で使ってもらえそうか、顧客の立場で考えてみるわけです。また、提供する技術情報が相手のプラスになるかどうかも考えることが重要。
POINT 2 「最新情報をお持ちする」と伝える
(86ページより)
潜在顧客の概略がわかったら、次は電話。代表番号しかわからなければそこにかけ、たとえば回してほしい部署が技術部門なら、「最新の技術情報をお届けしたいので、その点をしかるべき部署の人に伝えていただきたい」と言えばいいわけです。
顧客はいつでも最新情報を求めているもの。とはいえ忙しさから、なかなか情報収集には動けないものでもあります。だから(業種にもよるものの)、最新技術情報の提供は、喜ばれても嫌がられることは極めて少ないといいます。
電話アポを断られる人は、「なにが相手のメリットになるか」を検証して伝えていないもの。技術情報の概略を聞いても、まるで関係がない場合は顧客がわざわざ時間を割いて会おうとすることはないわけです。よって顧客が求めるものはなんなのかを考え、その内容に合致した情報を提供することが大切。
なお、明らかに最新情報がマッチしていても、アポの取れない顧客も存在します。しかし、そのように自ら前向きではない姿勢をアピールするような会社は、放っておけばよいと著者は記しています。
POINT 3 アポ取りの失敗を恐れるな
(87ページより)
新規潜在顧客に電話してみても、最初の数件は断られるかもしれません。しかしコツをつかめば、その後はおもしろいようにアポは取れるものだといいます。逆に、断られてやめるようでは、到底一流のビジネスパーソンにはなれないもの。新規のアポを取って販路を広げれば、社内で必要な人材となり、それが給料や昇進にも反映されるものでもあります。
(以上84ページより)
「この人から買いたい」と思われる人になる
「この製品はいいですよ。ぜひご購入の検討を!」というスタイルの営業は少なくありません。とにかく売りたいという気持ちが、態度や言葉ににじみ出てしまうわけです。ところが売りたい気持ちが前面に出すぎると、顧客には「自分に都合のいいことを必死にしゃべっているな」と見透かされてしまうものでもあります。しかし「一緒に問題解決をしたい」という強い気持ちが伝われば、顧客は信用してくれるようになるわけです。
大切なのは、顧客の話をよく聞き、「顧客がなにをしたいのか」を正しく理解すること。そして、ひとつひとつの質問や依頼に対して誠実かつ適切に返答すること。そうした姿勢を通じて、「この人なら売りっぱなしにしない」と感じてもらうということです。まるで顧客先の社員であるかのように、先方の問題解決に真摯に向き合わなければならないということなのです。
POINT 1 顧客の抱える問題に真剣に向き合う
(92ページより)
顧客からの信頼は、顧客の抱える問題に対するこちらの真剣さによって生まれるといいます。相手は、売り手であるこちらが、売るためだけに語っているかどうかがわかるもの。売るために必死な人間は、売りっぱなしになることが多いと知っているわけです。
だからこそ大切なのは、顧客がどういう問題を抱えているのかを聞くこと。わからなければ、わかるまで聞けばいいのです。そして、その解決のために顧客以上のレベルで情熱を傾ける。すると顧客は「そこまで一生懸命こちらのことを考えてくれるのか」と思うようになり、それが安心感、信頼感へとつながっていくということです。
POINT 2 顧客には正直に自社製品やサービスを伝える
(93ページより)
顧客には、本当のことを伝えるべき。自社製品やサービスに不足している店があるのであれば、それも伝えるようにするということです。隠したところで、顧客は競合品と比較する過程において、いずれ気づくものでもあるのですから。逆に言わなければ、それがきっかけとなって顧客の信頼を失う恐れも。つまりは下手な計算をせず、正面からまっすぐに向き合うことが大切だというわけです。
POINT 3 顧客を想うからこそ反論できる
(93ページより)
顧客がなにを求めているのかを知るためには、質問をしなくてはなりません。真摯に相手に貢献したいと考えている人は、質問を恐れないもの。しかし自らのこととして顧客の問題をとらえると、顧客の意見に同意できないときもあるはずです。そういうときは、ていねいに言葉を返すことが大切だと著者はいいます。
「ご意見は理解しますが」「お言葉ですが」というフレーズに続けて、自分の考えを述べるわけです。
相手のことを本当に思っていない人は、意見を言うことができないもの。そこで、恐れを捨てて質問をすることが重要。そして場合によっては、「顧客の成功のために」反論すべきだという考え方です。(91ページより)
著者が事業開発、営業畑出身であるため、本書は基本的に営業マン向けの内容になっています。実体験から得たものをベースにしているだけあって、地に足のついた内容になっているわけです。しかし当然ながら、営業以外の仕事に携わる方にも多くの気づきを与えてくれるはず。さまざまなビジネススキルを高めたいのであれば、読んでみる価値はありそうです。
Photo: 印南敦史
印南敦史
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