「きちんと質問できる人」になるために、覚えておきたい5つのポイント
『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』(安達裕哉著、日本実業出版社)の冒頭において著者は、「ビジネスパーソンに『コミュニケーション能力』が求められるようになっている」と指摘しています。そして、その理由は2つあるのだとか。
まず1つ目は、ますます知識が専門化し、「専門家同士の協力」なくして成果を上げることができないという現実。現代は専門知識によって組織に貢献する「知的労働者」が中心となる世界であり、彼らは「専門知識」と「コミュニケーション能力」の両方を兼ね備えてはじめて業績に貢献できるということです。
2つ目に挙げているのは、会社のコアメンバーが行う定型業務の減少。「定型的な仕事」はソフトウェアやクラウドソーシング、外部リソースに委託し、コアメンバーは付加価値の高い仕事に集中することが求められているわけです。しかしクリエイティビティが求められるそれらの非定型業務は、「失敗したら改善してやりなおす」という試行錯誤のサイクルを繰り返していくべきもの。とはいえ、さまざまな視点からアイデアを出し合う必要がある「改善活動」は1人でできるものではないので、ここにおいても「コミュニケーション能力」が必要だということ。
そこで本書では、著者が仕事、マネジメントに関するメディア「Books&Apps」に書いてきたコラムのなかから、コミュニケーション能力に関する記述をまとめているわけです。第3章「どうしたら『コミュニケーション能力』は身につくのか」から、いくつかを引き出してみたいと思います。
「1を聞いて10を知る人」になるためのコミュニケーション術
わずかなことを聞くだけで、多くのことを理解する人がいます。そして、そういう人を形容する際、「1を聞いて10を知る人」という言葉が用いられることがあります。では、そういう人はどうやって仕事をしているのでしょうか? そのことを考えてみるにあたり、著者は新人の営業マンが先輩から営業を習っているときのケースを引き合いに出しています。
「営業にとって、最も重要なのはお客さんの話を聞くことです。要望をきちんと聞くことで、お客さんから信頼してもらえます」
先輩からそう聞いた場合、普通の人は「なるほど。それならどうやって聞けばよいのか教えてほしい」と考えるもの。しかし「1を聞いて10を知る人」は、次のように発想するというのです。
“「なぜ、聞くことが重要なのだろうか?」
「そもそも聞くことではなく、話すことが重要なシーンはあるのだろうか?」
「そもそも『聞く』という行為は、私が知っている『聞く』という行為と同じなのだろうか?」
「要望とは何か?」
「信頼が得られた、というのはどのような状態を指すのか?」
(80ページより)”
つまり、「当たり前」をそのまま流さないということ。その証拠に彼らは先輩から話を聞くと、必ず質問をするといいます。そういう意味において、「1を聞くと、10の質問が浮かぶ」のが「1を聞いて10を知る人」の実態だというのです。もっといえば、「当たり前」とか「前提」とされていることを一度疑ってみる姿勢があるということ。
“要するに、自分の知識を俯瞰し「わかっていない部分がわかる」のが、「1を聞いて10を知る人」だ。(81ページより)”
コミュニケーションとは、一方通行では成り立たないもの。双方向のコミュニケーションを活用する人こそ、1を聞いて10を知る人だということです。(78ページより)
「きちんと質問できる人」になるための5つのポイント
“Googleでは、新人のオリエンテーションで5つの行動指針を教えていて、その1つ目は「質問する。とにかく質問する!」である(『ワーク・ルールズ!』ラズロ・ボック/鬼澤忍・矢羽野薫訳/東洋経済新報社)。(88ページより)”
しかし、それを素直に信じて質問をしたとしても、その人の評価ははっきり2とおりに分かれると著者は指摘しています。それは「すぐに聞きに来る、できる人」と「自分で考えない、ダメな人」なのだとか。そして、同じように質問しているはずなのに、なにが評価を分けるのかを観察すると、「すぐに聞きに来る、できる人」の質問には次のような特徴があることがわかるのだといいます。
“1. 自分の意見を持って質問している
できる人は、「私は〇〇と思うのだけど、どうか?」と自分の意見を持って質問をするもの。これは、「どこまでわかっているのか」を相手に伝えるために有効だといいます。そこで質問するときにはあらかじめ、「自分はなにがわからないのか?」を紙などにまとめておくと効果的。
“2. 何度も同じことを質問しない
きちんとメモをとり、同じことは二度聞かずに済むようにするということ。いうまでもなく、何度も同じことを聞かれると、誰でもイラつくものだから。
“3. 「どうすればいいですか?」と言わない
「どうすればいいですか?」は、相手に進め方を委ねており、主体的ではない受け身の姿勢の質問。それでは、相手からの信頼感を得ることは困難です。一方、できる人は「〇〇についてやり方を知りたいのですが、聞きたいのは手順と、作業ごとのポイントと、最終チェックの方法です」など、聞くべきことを絞って聞くもの。この聞き方なら、主体的に自分がやるべきことを整理する努力をしているということになるわけです。
“4. 教えてもらったことを確認する
教えてもらったことを、一度で理解できる人はほとんどいません。そこで、教えてもらったことは自分の言葉になおした上で、最後に必ず確認することが大切。確認するためには、まず自分で咀嚼してアウトプットしなければならないため、理解が深まるわけです。
“5. 目的を添えて聞く
人になにかを尋ねるときは、質問する目的を添えると質問の精度が上がるそうです。たとえば「Googleアナリティクスの見方を教えてほしい」とだけ言うのと、「コンバージョン率を上げたいので、Googleアナリティクスの見方を教えてほしい」と言うのとでは伝わり方が違うため、おのずと回答も変わってくるというわけです。
なお、上司や先輩は「聞きに来ない」と部下に責任を押し付けてしまいがち。しかし「聞きやすい雰囲気」をつくるのが難しいのも事実なので、「質問がヘタ」なのは必ずしも質問者のせいだけではないとも著者は記しています。(88ページより)
コミュニケーションとは、「相手の求めることに気づき、それを提供する行為」だと著者は主張しています。仕事においてもプライベートにおいても、相手が求めていることに気づかない限り、相手とのコミュニケーションは成立しないわけです。
つまりコミュニケーション能力とは、うまく話す能力でもなければ、相手に気に入られるテクニックでもないということ。それは、「相手のことをひたすら深く知ろうとする」姿勢だという考え方には、共感できる部分があるのではないでしょうか。
印南敦史
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