嫌なことは夕方に伝えるべき? 言いにくいことをうまく伝えるテクニック
上司や部下とのつきあい方を筆頭として、人間関係に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。そこでご紹介したいのが、『誰とでも一瞬でうちとけられる! すごいコミュニケーション大全』(佐藤幸一著、総合法令出版)。心理学の知識とテクニックを活用し、日常のさまざまなシーンで使える90種ものコミュニケーションテクニックを紹介した書籍です。
“本当は仲良くなりたいのに、気をつかいすぎてきっかけがつかめない。
人間関係のトラブルをうまく回避して、気配りを自然とできる人になりたい。
この本は、そのような人のために書きました。(「おわりに」より)”
コミュニケーションは相手との関係性によって左右されるもので、その関係性も常に変わりやすいもの。苦手な人に対して「イヤだなぁ」という気持ちで接していると、相手にそれが伝わってしまったりもします。しかし大切なのは、一歩踏み込んで相手の本音を見つけ出すこと。それこそがコミュニケーションの醍醐味なのだと著者はいいます。
第3章「言いにくいことをうまく伝えるテクニック」から、いくつかを引き出してみましょう。
嫌なことを伝えるときは「夕方」の時間帯を狙う
“こんな人におススメ!
・ 注意、指摘をする立場の人
・ ネガティブなことをうまく伝えられない人
・ 緊張するとうまく話せなくなる人
(77ページより)”
職場やプライベートで、相手に指摘をしなければならないことはあるものです。言う側にとっても言われる側にとっても気が重たくなりますが、「伝える時間帯」に気を配ると、相手に思いが伝わりやすくなるそうです。
具体的には、1日のなかでは夕方の時間帯(15時〜17時くらい)が、日も落ちてきて心身ともにリラックスできる状態なのだとか。昼食後の眠気も覚め、1日の終わりに向けて頭も働いているため、相手も指摘を受け止めやすい状態だというのです。もし夕方にネガティブなことを言われたとしても、職場であればすぐに終業時間になります。また、その後には夕食タイムも控えているため、気持ちが切り替えやすいということ。
控えたいのは、朝イチや昼食時、21時以降など。朝は眠気のため機嫌が悪い人もいるので、「きょうも1日がんばるぞ!」と気合が入っている人には水をさしてしまうことになる可能性が。昼食時では、せっかくの休憩を台なしにされたという気持ちにさせて怒らせてしまうかもしれませんし、夜遅すぎても気になって眠れなくなってしまうということ。時間を上手に選び、伝える際の相手に与えるダメージを練るべく減らすことが大切だという考え方です。(76ページより)
反論されたくなければ、ホッとしているときを狙う
“こんな人におススメ!
・ 注意、指摘をする立場の人
・ 相手のネガティブな反応を最小限に抑えたい人
(79ページより)“
言いにくいことを伝えるときは、時間帯だけでなく、相手の精神状態や疲労度を意識することも大切。人は忙しくて落ち着かなかったり、緊張状態にあったり、体調がすぐれなかったりすると、精神的にも余裕がなくなってしまうからです。そういうときは極端に視野が狭くなっているため、指摘やお願いをしても、聞き入れてくれる可能性は低くなることに。また、言われたことをマイナスに受け取ったり、大げさに捉えたり、激しい抵抗や反論をされる可能性もあるわけです。
だからこそ重要なのは、タイミングを見計らって伝えること。忙しさが一段落したあとや、大きなイベントが終わったあと、体調が回復したあとなどに、「お仕事お疲れさま。ちょっと話したいことがあるんだけど、どうかな?」というように、相手を気遣いながら声をかけるといいそうです。
相手に余裕のないときは、会話や表情から判断できるもの。話しかけたあとの反応が遅い(会話のテンポやメールの返事がいつもより遅い)、些細なことで愚痴や言い返すことが多い、口数が少ない、表情が浮かないなどというときは、自分のことを伝えるよりも、相手の話を聞くことに徹したほうがいいわけです。(78ページより)
ネガティブな事柄はひとつに絞って伝える
“こんな人におススメ!
・ 一気にまとめて話したくなる人
・ 緊張するとうまく話せなくなる人
(81ページより)”
相手に注意するときは、言いにくいことはすべて話して一気に終わらせたいと思ってしまうもの。しかし、相手にきちんと伝わらないことには意味がありません。また、相手に指摘したいことや注意したいことが複数あったとしても、それらを一度に伝えるのはお互いにヘビー。ひとつひとつの内容が散漫になったり、わかりにくかったりして、結局相手は理解しないまま同じミスを繰り返してしまうこともあるかもしれません。
そこで、言いたいことが複数あったとしても、そのなかでいちばん大事なことに的を絞り、一回の対話でひとつのトピックに集約して伝えるべきだと著者。大事なひとつの注意事項がしっかり相手に伝われば、他の注意点も自ずと改善されるからです。一気にたくさん伝えて相手のモチベーションを下げるより、ひとつひとつ確実にクリアさせることを目指すべきだということ。
なお、「実は○○さんに伝えたいことがひとつあって」と予告しておくと、「ひとつだけ聞けばいいんだな」と相手は聞く姿勢ができ、落ち着いて聞く耳を持つもの。また、「ちょっと言いにくいことなんだけどね…」「もしかしたら耳が痛いことかもしれないんだけど」という前置きのフレーズを入れるのも効果的。聞く心構えができて、ショックが緩和されるわけです。(80ページより)
言いにくいことはポジティブな言葉で挟んで伝える
“こんな人におススメ!
・ 注意・指摘をする立場の人
・ 率直に言って相手と気まずい空気になる人
・ 言いにくいことを言うときに緊張する人
(85ページより)“
相手をがっかりさせるようなことを話さなければならないときがあります。そんなときは、その伝えたい内容の前後をポジティブな言葉で挟んで伝えると、ショックな気持ちが多少軽減されるものだといいます(サンドイッチ話法)。
たとえば相手に企画の不採用を知らせる場合は、「○○さんのプレゼン、上層部にも評判よかったんですけど、社内的な事情で時期的に厳しいみたいで…今回は実現が難しい状況ですが、個人的には○○さんの企画力は素晴らしいと思っていますので、ぜひ次回はご一緒させていただきたいです!」というように伝えるわけです。つまりこの場合は、「褒める」→「断り」→「褒める」という流れをつくって相手の残念な気持ちを和らげるということ。
ポジティブな感情で挟みつつ、相手の足りない点をやんわり指摘するというのは、少し過剰に思えるかもしれません。しかし、そのくらいポジティブな言葉を盛ったほうが、相手はやる気になると著者は記しています。(84ページより)
言いづらい深刻な事実は、話の最後に伝える
“こんな人におススメ!
・ 重大な決断を伝える立場にある人
・ 結論から先に言ってしまう癖のある人
(91ページより)”
伝えたいことは、結論から先に話すとわかりやすいもの。しかし相手があまりにショックを受けそうな重たい事実は、最初に伝えるのは酷でもあります。そこで、まずは「そうなった経緯や背景」を、具体的に説明してから話すといいそうです。たとえば、会社の重要な決断を話すような場合。
「我々が全力で開発に取り組んできた○○製品ですが、ご存知のように競合他社のあおりを受け、売り上げが半減している状況です。業績回復に向けてあらゆる方向から対策を講じてきましたが、やむなく今年度をもって販売停止になりました。それにともない、大幅な組織変更や部署の異動・移転をする可能性がありますので、ご理解いただけたら幸いです」というような感じ。
経緯をていねいに説明することで、聞いている側が重大な事実を受け止める心構えができ、ショッックや反発を避けることができるという考え方。重大なことは相手に納得してもらうためにも、背景や経緯を先に説明して相手に心構えをしてもらい、より具体的に伝えるべきだということです。
他にも「初対面で好印象を与えるテクニック」「もっと相手と親しくなるテクニック」「相手を説得したいときのテクニック」「好きな異性と仲よくなるテクニック」「めんどうな人をうまく操るテクニック」と、さまざまなコミュニケーションのコツが紹介されています。具体的にまとめられているため、実用性も抜群。ぜひ手元に置いておきたい1冊です。
印南敦史
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