ビジネスシーンでは思った以上に「見た目」が大切。「どう思われたいか」の戦略を持とう
『ビジネスという勝負の場は一瞬、しかも服で決まる』(木暮桂子著、ダイヤモンド社)の著者は本書の冒頭で、アメリカの文献のなかから見つけたという「面接で、面接官が不採用にした理由のトップ10」を紹介しています。
□ 個人の外見が貧弱
□ 横柄、過剰に積極的、うぬぼれが強い、知ったかぶりに見える
□ 自己をはっきりと表現できない
□ 自信と平静の欠如。神経質、落ち着きがない
□ 興味と意気込みの欠如。受動的、無関心
□ 無目的あるいは無目標に感じる
□ 正規外の活動に参加しない
□ 金銭を過剰に強調する。支払のよい仕事にしか興味がない
□ 学校の成績が悪い
□ 下位からスタートするのを嫌がる
(「Introduction」より)
ドキッとするような言葉ばかりですが、この10項目のうち、「前半の6つまでは『見た目』から感じることが大いに影響している」と著者は指摘しています。面接官は外見だけではなく中身を見て決めようと思っているはずですが、なるほど無意識のうちに評価がかなり外見に左右されているのかもしれません。
人は初対面の短い時間のなか、多くの「非言語」で判断するもの。しかも、一度ついた印象を覆すのは現実的に困難でもあります。だとすれば、「見た目」を効果的に使うことは極めて重要になるわけです。最初の印象が悪ければ、中身で勝負するチャンスさえ得られないこともあるのですから。
つまりこうした考え方を軸に、「優秀さ」が瞬時に伝わる外見をつくるためのヒントを紹介しているのが本書だということ。きょうは序章「『あれ?』と思われたら負け」のなかから、記憶にとどめておきたい基本的なポイントを抜き出してみたいと思います。
「見せたい自分」は相手には届いていない
経営者や政治家をクライアントに持ち、外見力強化のコンサルティング、スピーチトレーニングを行なっているという著者は、企業の役員クラスを対象にしたセミナーで、ある取り組みをするのだそうです。それは、「自分は周囲から、どんなふうにみられていると思うか」のチェックシートにチェックを入れてもらうこと。
そこには「感じのよい」「フェアな」「誠実な」「堂々とした」「思いやりのある」「華やかな」などの項目が書かれており、複数の項目に自分の思うままにチェックしてもらうのだとか。そしてその後、セミナーに出席している同僚に同じシートを渡し、実際に他の人からはどんなふうに見えているのか、外から評価してもらうというのです。
さて、結果はどうなるのでしょうか? ここまでお読みになった時点で多くの方が気づいているでしょうが、本人が「自分はこう見られている」と思っていることと、「周囲はこう見ている」ということとの間に、しばしば大きなギャップが生じるのだそうです。自分が思っている印象と、他人が思う印象は違っていることが多いということ。(22ページより)
「課長クラスの外見」と「トップの外見」には大きな差がある
企業のウェブサイトを見ればわかるとおり、それなりの大企業のトップはみな魅力的な外見をしているものです。とはいえ、全員がもともと顔立ちがいいというわけではないでしょう。トップたちは外見の大切さをわかっているからこそ、ときには「見た目」の専門家をつけて「見え方」に気を配っているということ。
いいスピーチをするためにスピーチライターをつけるように、いい装いをするためにビジネスアピアランスの専門家をつけるという発想です。そして写真の撮影などにも細かく気を配り、印象をつくっているわけです。
“やはりリーダーになる人というのは、「人を魅了する力」の強い人が多いです。
そういう人は、自分の能力だけでなく、「外見」の力をわかっています。外見を操作して、「信頼感」「優秀さ」などの説得力を増しています。こういう力も使えるからこそ、リーダーであるとも言えます。(28ページより)”
しかし残念ながら、課長で止まってしまう人は、全体的に人を魅了する力が弱いと著者はいいます。エグゼクティブ層になればなるほど、「見た目」が重視されていくということなのでしょう。(28ページより)
「見た目」が変わると自信が出てくる
これまで多くの個人、企業の外見力強化コンサルティングや企業研修などを手がけてきた著者は、「見た目」を変えただけで人生が変わったという感想を何人もの人の口から聞いてきたといいます。
“ある会社員の男性が、スーツを紺色に変え、ネクタイを何本か持ち、髪型を変えました。それだけで、雰囲気が「スタイリッシュで仕事ができそう」にかわりました。自信も伝わるようになりました。
彼はこう語っていました。明らかに周囲の自分を見る目が変わった。違う視線を感じるようになった。女性からの反応もいい。注目されていることがわかると自信が出てきた。姿勢も変わった。意欲的に仕事に向かえるようになった…。
こうなれば、仕事もうまくいくようになります。(30ページより)”
一度「見た目」を変えた人は、自ら「見た目」に気を配るようになるのだそうです。当然ながら、最初は勇気がいるはず。しかし一度身につくと、それがまたプラス効果を生んで、自信につながるというのです。著者の言葉を借りるなら「ポジティブスパイラル」が起きるということで、そうなれば悩みを解消できるわけです。
まずは「見た目」をつくってみる。それが認められて信頼感を得やすくなれば成果につながり、活躍の場が人間としての厚みを生むことにもなり、やがてそれが外ににじみ出てくる。そんな好循環が生まれてくるというのです。
もちろん中身を磨くことも重要ですが、その結果が表に出てくるまでには相応の時間がかかるもの。中身を磨きつつ、同時に「見た目」も変えてみることが大切だという考え方。一度でも「見た目」を変えるメリットに気づくことができれば、最初の一歩が踏み出せるはず。そして、最初の一歩さえ出せればしめたもの。以後は一生、「洋服のせいで得する」人生になるそうです。(30ページより)
どう思われたいかという戦略を持っておく
とはいっても、「自分は『見た目』をつくるのが苦手だ」という人も少なくないはず。このことについて著者は、「多くの人が同じようにファッションには苦手意識を持っている」と記しています。おしゃれが得意だと思っておる人は、ほんの一握りしかいないもの。それどころか、ビジネススーツとしては間違ったものを着ている場合もあるというのです。
ビジネスの洋服で大事なのは、「『見た目』が重要である」ということをしっかり認識すること。そして、「『見た目』にも働いてもらうのだ」という意識を持つこと。それを戦略的に行うことが、重要な意味を持つということです。つまりは、「外から自分はどう見られたいのか」を定めておくことが大切。
印象を操作することは、とても大切だと著者は断言します。なぜなら、印象を操作しなければ、持ってほしくない印象を持たれかねないから。「相手に間違ったメッセージを発信してしまうリスクが常に潜んでいる」ということであり、それを防いでくれるのが印象の操作だということ。
だからこそ、「どんな印象を持たれたいのか」を自分で定めていくことが大切になってくるのだと著者。ちなみにビジネスマンとして持っておくといい「見せたい印象」は、ざっくりと以下の6つだそうです。このタイプの違う6つを持っておき、ビジネスのあらゆるシーンに合わせ、これらをチョイスできれば、可能性が広がるということかもしれません。
“1. 若々しさやアグレッシブさなどのスポーティな雰囲気
2. 品の良さや育ちの良さ、穏やかさなどのジェントルな雰囲気
3. 優しさや話しやすさ、人の気持ちがわかるといったフェミニンな雰囲気
4. 自信や大胆さ、力強さのあるリーダーの雰囲気
5. 信頼感や落ち着きなどのコンサバティブな雰囲気
6. 独創性や革新、個性的などのクリエイティブな雰囲気
(34ページより)”
まず大切なのは、これら6つのなかから「自分の基本パターン」を選ぶこと。その際には「周囲から持ってもらいたい印象」を踏まえ、自分の職業と性格を考慮して選ぶのがいちばんだといいます。そして、その日に合わせてチョイスすることが大切。(33ページより)
以後の章では、スーツを着こなすためのポイントがわかりやすく紹介されています。すぐ実践できるものばかりであるだけに、本書を活用すれば、著者がいうように「自分の印象を操作」できるようになるかもしれません。
印南敦史
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