4ヵ国語を数年でマスターしたオペラ歌手の学習法に納得

2017.5.3 12:07 更新

読了時間:10分56秒

わずか数年で4カ国語をマスターしたオペラ歌手に学ぶ外国語学習法

外国語

アメリカのオペラ歌手、ガブリエル・ワイナー(Gabriel Wyner)氏は、たった数年の間に4カ国語を話せるようになったそうです。同氏はそのプロセスにおいて、「限られた空き時間で外国語を学べる最高のメソッド」を思い付いたのだとか。4つのステップからなるこのメソッドは、あなたにもきっと役立つはず。これさえあれば、もう言語習得に何万円も投資する必要はないかもしれません。

私が4カ国語(イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語)を習得するプロセスで編み出したメソッドを紹介します。例えばフランス語の場合、私はこのメソッドを使って、5ヶ月間でCEFRのC1レベルを達成しました。現在は、同じメソッドでロシア語に挑戦しているところ。フランス語と同様、5ヶ月間でC1に到達する計画を立てています。

このメソッドは、4つのステージに分けられます。各ステージにかかる期間は言語ごとに異なりますし、1日にかけられる時間によっても変わってきます。米国外務職員局では、英語を母国語にする人から見た各言語の難易度を発表しています。これによると、ロシア語はフランス語の2倍、中国語はロシア語のさらに2倍の時間がかかるとされており、相対的な難易度は的を得ているような気がします。とはいえここでは、フランス語の習得を仮定して話を進めましょう。1日に30分~60分程度の時間が取れることを前提に、各ステージにかかる予想時間を併記しておきましたので参考にしてください。

ステージ1:正しい発音を身に付ける

期間:1~2週間(未知の文字を持つ言語の場合、慣れるまでにもっと長い期間が必要です)

発音から始めるのには、いくつかの理由があります。耳で聞くことから始めることで、従来型の学習法を始める前から、リスニング能力が飛躍的にアップします。その状態でボキャブラリーを学ぶと、発音やスペリングになじみやすく、記憶に残りやすくなるのです。例えば、フランス語の正しい綴りは、発音と関連づけて覚えた方が圧倒的に覚えやすくなります。これをしっかりやっておけば、後にネイティブスピーカーと話すときに、相手が英語に切り替えたり、わざわざ簡単な言い回しをする必要がないため、刺激的な会話が可能になるのです。

ABC以外の文字を使う言語を習得するには、音標文字を覚える必要があります(日本語なら仮名、中国語ならピンインなど)。

では、発音を覚えるにはどうしたらいいのでしょうか?

やり方はいくつかありますし、オンラインから印刷物まで、リソースもたくさん出ています(CDまたはmp3付きの発音ガイドがおすすめ)。個人的には、多少の時間をかけてでも、英語の国際音声記号(IPA:International Phonetic Alphabet)を覚えておいた方がいいと思います。私の作ったこちらのビデオも参考にどうぞ(英語)。これをやっておけば、これから学ぼうとしている言語と英語の音の違いがわかるようになります。IPAの学習プロセスではすべての母音と子音を覚えるので、フランス語の単語がどうしてフランス語らしく聞こえるのか、中国語の単語がどうして中国語らしくきこえるのかが理解できると思います。

ステージ2:ボキャブラリーと文法を習得する(母国語の使用は禁止)

期間:約3カ月間。このステージでは、ボキャブラリーと文法のフラッシュカードを作成する工程と、それを見直す工程に分けられます。

このステージでは、次の3つのコツが重要です。

第1のコツは、「Anki」という暗記プログラム。スマートフォンのほか、あらゆるコンピュータプラットフォーム上で動きます。間隔を空けて反復練習させてくれるプログラムになっていて、これまでの正解率に応じてフラッシュカードを表示してくれます。これにより、膨大な量の情報を、素早くあなたの長期記憶に蓄積できます。スマホで1日30分やれば、1日に20~30の新しい単語を覚えることができるでしょう。

第2のコツとして、ミドルベリー大学の有名な言語誓約書(語学クラスではその言語以外を使わないことを誓約させられる)を、自分なりにアレンジして使っています。つまり、英語禁止!(つまり、日本人なら日本語禁止!)それまでに覚えた貧弱なボキャブラリーと絵だけを使って、新しい単語を覚えていきます。母国語を使わないことで、その言語で直接考える練習になり、考えるときにいちいち頭の中で翻訳する必要がなくなるのです。その結果、より早くボキャブラリーを確立でき、長期にわたってそれを維持できます。これで、上達スピードがぐっと高まるでしょう。

第3のコツは、ボキャブラリー習得時に、頻出単語リストを参考にすること。よく使われる単語から覚えることができるので、時間的な効率も高まります。1000語も覚えれば、一般的な文章に使われる単語のうち7割は知っていることになります。2000語で8割。これだけでは完璧ではありませんが、非常に素晴らしい基礎になるでしょう!

1つの単語も知らない状態から始めるには、次のようなステップが必要になります。

・時間節約のために、一般的な英単語のうち、絵で描くのが極めて易しい400語の基本リストから着手します。「男」「女」「犬」「猫」「走る」「料理する」などの類です。これらの適訳を見つけ、Ankiのカードとして追加していきます。もちろん母国語は使用禁止なので、使うのはその単語と絵のみ。

・これが済んだら、頻出単語リストを見ながら、絵だけで説明できるような単語(基本的な名詞や動詞)をピックアップして、Ankiに追加します。ある程度の単語がそろったら、それらを組み合わせて遊んでみましょう。Google翻訳(ここだけは母国語禁止ルールにおける例外です。でも、Ankiカードには母国語を使いません)と文法書を参考にしながら、文を作ります。文ができたら、言語添削サイト「lang-8.com」で確認したのち、Ankiに追加しましょう。文の一部を空欄にしたカードを作れば、文法や単語接続の練習になります。文法書の内容をそのままAnkiに入力してしまってもかまいません。

・ボキャブラリーと文法の習得が進んだら、ついに単一言語辞書(例えば仏仏辞書)の作成に移ります。より抽象的な単語の意味を、自分で考えて書き込んでいくのです(ここでも、lang-8.comで確認します)。この作業はどんどん広がっていきます。知っているボキャブラリーや文法が増えるにつれて、より多くのボキャブラリーや文法の考え方を表現できるようになるのです。基礎として頻出単語リストの2000語をすべて覚えたら、興味のある分野の単語を付け足してもいいでしょう。

・目指すレベルにもよりますが、多くの人にとっての最終目標は、単語2000から6000語と、文法カード1000枚程度になるでしょう(あくまでもAnkiでのカードの話で、今後さらに文章を読むことで、より多くの単語を覚えていくことになります)。かなり大ざっぱな見積もりですが、カード5000枚分を習得するのにかかる期間は、1日30分の学習で6カ月弱といったところでしょうか。1日60分やれば、これは半分になります。

ステージ3:聴く・書く・読む

期間:ステージ2、4と若干オーバーラップします。ステージ2に入って1~2カ月もすると、違和感なく読み書きができるようになってきます。それがステージ3を始めるときです。私の場合、集中訓練であるステージ3と4には、すべての自由時間を読書、テレビ、作文にささげるというかなりの無茶をして、合わせて約7週間かかりました。

十分なボキャブラリーを習得し、文法にも慣れてきたら、作文、テレビ番組鑑賞、読書を始めます。目にしたものや自分のしていることを、(独り言でもいいので)口にしてみるのもいいでしょう。作文の添削結果は、Ankiに追加します。Ankiによるボキャブラリーと文法の強化は、このステージでも続けましょう。

読む本や見る番組は、自分の興味があるものにしましょう。ここでは何よりも、量が大事。私の場合、大好きな「ハリーポッター」シリーズの翻訳と「24」の吹き替え版を夢中になって読み/見ました。理解に苦しんだのは最初の数時間ぐらいで、あとは文字通り1日中テレビの前に座っていられるし、それがとても生産的なのです! 作文もテーマは自由。日記、意見、今日やったこと、買い物リストなど、本当に何でも構いません。「lang-8.com」に送信できるものに書き出したら、添削をしてもらい、その結果をAnkiに追加しましょう。

ステージ4:話す

ある程度なら話せて(たどたどしくても、文法やボキャブラリーの穴があまり多くない程度)、身の回りのことを書けるようになってきたら、その言語にどっぷりと浸かれる場所を探します。文字通り、ずっとその言葉を話す場所です。もちろん母国語は禁止です。さもなければ、自ら学ぼうとするスキルを習得することができません(このスキルはあなたの文法やボキャブラリーの穴を迅速かつ自動的に回避してくれるので、あなたはそれに気づくこともないでしょう)。7週間もの間、世間とのつながりを断ってその言葉だけを話すなんて無理という人は、2週間でもいいので、その言語が話されている地に赴いて、可能な限り話せる環境を作ってもいいでしょう。それも難しければ、インターネットを使って、Skypeのビデオチャットなどで会話を練習し、外国語のテレビや映画を流したり、本を読んだりすることで、その言語にどっぷりと浸かれる環境を模擬することも可能です。

集中力を高めるほどステージ1~3で学んだすべてがつながり、脳の適応が早まります。これが、会話の上達につながっていくのです。

Gabriel Wyner(原文/訳:堀込泰三)

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Lifehacker

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