眠るのにベストな時間帯は午後10時〜午前2時。最高のコンディションをキープする「睡眠」の技術
ストレスに対処する方法はたくさんあるが、睡眠を改善する方法となると、「8時間寝なさい」という決まり文句以外はほとんど見当たらない。そもそも、8時間寝たところで問題は解決しない。8時間寝ても、毎朝疲れがとれずにぐったりとした気持ちで起きている人がたくさんいる。だから私は、クライアントの睡眠時間を増やすだけでなく、睡眠の質も大幅に改善する方法を提供しようと思った。(「はじめに」より)
これは、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』(ショーン・スティーブンソン著、花塚 恵訳、ダイヤモンド社)の著者の言葉。アメリカ国内の健康部門において第一位の人気を誇るポッドキャスト”The Model Health Show”のクリエイターだそうです。個人・企業向けの健康アドバイザーとして活躍する過程において、「鍵を握るのは”良質の睡眠”だと気づいたのだとか。
そこで上記のような思いに至ったということですが、その「方法」を実行したクライアントは次々と改善していったのだといいます。そこで本書においても、著者のクライアントが実際に試してみて効果のあったさまざまな方法を紹介しているわけです。ちなみに、このことについては重要なポイントがあります。
おもしろいことに、私は一度の寝る時間を増やすようにとは言わなかった。あくまでも、「賢く眠る」ことの大切さを伝えただけだ。(「はじめに」より)
しかしそれにより、クライアントの睡眠の質は劇的に改善し、肉体や思考も大きく変わったというのです。きょうはそのなかから、CHAPTER 6「午後10時〜午前2時のあいだに眠る」に注目してみたいと思います。
睡眠に最適な時間帯
睡眠に適した時間に眠りにつくと、睡眠がもたらすメリットは何倍にも膨らむもの。このことの確実性を示すために、著者は高名な精神科医であるクリート・チャウダリーの言葉を引用しています。
「いつ寝るかは、株式市場でいつ投資するかと同じ。どのくらい投資するかは問題ではない。いつするかが大事なのだ」(86ページより)
ホルモンの分泌や疲労の回復は、午後10時から午前2時のあいだに睡眠をとることによって高まるといわれているのだそうです。その時間帯が、いわば睡眠にとっての「投資タイム」。
つまり投資タイムにいちばん身体が回復し、それ以外の時間の睡眠で得られる効果とはくらべものにならないということ。考えてみれば当然の話で、あまり意識されることはないとはいえ、私たち人間も自然界の一部。夜になって地上から光が消えるというのは、私たちも灯りを消せという宇宙からの合図だという考え方です。
とはいっても、いまや自然に従わなくても家のなかを明るくしておける時代。午前2時までノートパソコンに向かっていたとしても、あまり疑問を感じなくなっているのではないでしょうか? しかしそういう生活環境が当たり前になってしまうと、「本当は不自然だ」という意識を持つことすら難しくなってしまうもの。
本来、人間の身体は、暗くなってから数時間のうちに眠るようにできています。そこで、もしも生まれ持った原理を無視するようになってしまったのだとしたら、もとに戻すためになにかをした方がいいということです。(86ページより)
ホルモン分泌を最大にする
最良の睡眠は、本来のリズムでホルモンが生成されることが不可欠。つまりホルモンが本来分泌されるべき時間に眠るようにすれば、睡眠から得られるメリットは格段に大きくなるわけです。
たしかに午前1時に寝て午前9時に起きれば、8時間の睡眠がとれることにはなるでしょう。ところがこの時間帯では、ホルモンの分泌にもっとも有利な投資タイムをほとんど逃すことになるのだといいます。そればかりか、メラトニンもHGH(ヒト成長ホルモン)も、投資タイムに寝ているとき分泌量が最大になるのだとか。そこで、「いつまでも若々しくいたいのなら、若さを保つホルモンともいわれるHGHの分泌量が最大になるのは、投資タイムに眠っているときだということを覚えておいてほしい」と著者は記しています。
なかには、8時間以上寝てもそれほど寝たように感じられないという人もいるかもしれません。この点について前出のチャウダリー医師は、「午後10時から午前2時という、身体の再生が行われるときの睡眠が慢性的に不足していると、朝目覚めても疲れが残っていると感じることがある」と述べているそうです。
それほど、ホルモンの生成は大切だということなのでしょう。だとすれば、それを促す投資タイムを逃すことは、賢い選択とはいえないわけです。(87ページより)
「午後10時の元気」に頼ると不眠になる
午後10時ごろになると、体内のリズムに変化が起こり、メラトニンの生成量が自然と増えるそうです。これは、身体の修復、強化、再生に使う代謝エネルギーを増やすための変化。その時間に抗酸化作用のあるホルモンの生成が増えれば、DNAを損傷から守ることや、脳の機能を高めることなどにもつながるというのです。そのため、普段からこの時間に眠っている人は、なにも心配はいらないということ。
しかし午後10時でまだおきていると、代謝エネルギーの増加によって「元気が回復した」ように感じることがあるのだといいます。
こんな経験はないだろうか? 仕事を終えた午後6時から7時はクタクタで、ベッドに入ってぐっすり眠るのが待ち遠しい。ところが10時頃になると、パッチリと目が冴えて何かしたくなる…。(89ページより)
しかし、そのエネルギーは本来、体内で必要なメンテナンスに使われるものだというのです。にもかかわらず元気になったような気持ちになり、フェイスブックをチェックしたり、ネットフリックスでお気に入りのドラマを3話観たりすることに使ってしまうということ。
私たちの身体には、自らを修復し、フリーラジカル(有害な活性酸素)を排除し、ホルモンの生成を最大限に高める機能が備わっているのだそうです。でも、夜更かしをして身体の外で「復活した元気」を使おうとすれば、体内の機能は大きく損なわれることになります。
午後10時または11時を過ぎても起きていて、復活した元気に手をつけてしまう人は、いざ寝ようとしてもなかなか寝つけないもの。そうなれば、翌朝目覚めても、疲れがとれずに頭がぼんやりすることになってしまうわけです。しかもそれは、夜更かしを習慣にする代償のごく一部でしかないと著者は指摘しています。(88ページより)
睡眠不足のダメージは蓄積されていく
では、夜更かしして失った睡眠を埋め合わせることは、論理的に可能なのでしょうか? 睡眠の研究者たちは、不足した眠気がたまっていくことを「睡眠負債」と呼ぶそうです。そして著者は、この「たまっていく」という言葉に注目してほしいのだといいます。なぜなら睡眠不足の影響は、あっという間にたまっていくものだから。
一晩の寝不足程度の負債であれば、ぐっすり眠り、しっかり栄養をとって、適度に運動すれば、身体がうまく帳尻を合わせてくれるもの。しかし睡眠不足がそれ以上になると、たとえ二晩続いただけでも、体内のホルモンが「払えるあてのない負債」を取り立てにやってくるというのです。
ニューヨーク大学医学部の非常勤准教授で、同大学の睡眠障害センターにかかわるジョイス・ヴァルスレーベンは、失った睡眠を週末に取り戻そうとしても遅すぎると主張する。「その時点ですでにイライラしていますし、事故につながりかねないほど反応が遅れることもあります。それに、週末に朝寝坊すれば、睡眠のリズムが崩れて日曜の晩の寝つきが悪くなり、週明けからマイナスの状態でスタートすることになります」(95ページより)
ヴァルスレーベンは、曜日に関係なく睡眠のリズムを一定に保つことこそがメリットだとも語っているのだそうです。そのため、投資タイムを使ってなにができるかではなく、その時間に眠ることでなにが得られるかを考えてみてほしいと著者。遅くまで起きてしていることの大半は、しっかりと計画を立てれば日中にできることばかり。一日が24時間なのは誰にとっても同じなのだから、それをどう使うかによってすべてが変わるというわけです。(94ページより)
睡眠についての基礎的な考え方はもちろん、電子機器の使い方、腸内環境の整え方、最良の寝室のつくりかた、果ては最高のパジャマについてまで、睡眠についてのさまざまなトピックスを満載した内容。「なかなか眠れない」「疲れがとれない」などのストレスを抱えている方は、状況の改善を目指して読んでみてはいかがでしょうか?
(印南敦史)
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