コミュニケーションする上で大切な「ラポール」を構築するコツとは?
『すべての営業のための 絶対達成バイブル』(横山信弘著、フォレスト出版)の著者は、企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させてきたというコンサルタント。クライアントはNTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業まで広範だそうです。
そして本書のタイトルは、2011年に出版した『絶対達成する部下の育て方』(ダイヤモンド社)を起源とするもの。なお「絶対達成」というフレーズには厳しそうなイメージがあるかもしれませんが、なにも特別なことではないといいます。ただ、その人の「本気度」を推し量るには格好の言葉なのだとか。
本書は、10年以上、現場で「営業力をアップさせて目標を絶対達成させるコンサルティングをし続けた者たちと、その支援を受けて葛藤し、大きく成長していったクライアント企業の人たちによって作り上げられたノウハウが詰まっています。
すぐに理解できなくても「インパクト×回数」です。読んで実行し、体験を重ねていくことで、体で理解できるようになります。(「はじめに」より)
第2章「絶対達成スキル」から、いくつかのポイントを抜き出してみましょう。
コミュニケーションで主導権を握る
「絶対達成」し続けるために身につける必要があるのは、自分の思うとおりに物事を進めるコミュニケーションスキル。上司、部下、お客様などとのコミュニケーションにおいては、主導権を握る必要があるというのです。
それを踏まえたうえで知っておきたいのは、「権威の原理」。権威とは、「ある分野において知識や技術が抜きん出て優れていると一般的に認められていること」。たとえば業界内で有名だったり、組織内で圧倒的な結果を出している人がいるとします。誰もがその存在を認めているような場合、その人からリーディング(説得・誘導)されやすくなるということです。
組織のなかで圧倒的な結果を出している人には、相手に有無をいわせぬオーラがあるものですが、オーラの正体とは、その人の歴史。過去から現在に至るまでに築いてきた歴史、偉業、結果など、すべてを含んだものだということで、人はそれに動かされるわけです。
いってみれば、結果を出していくことで相手をリーディングしやすくなり、相手からリーディングされにくくなる。誰をも動かしやすく、誰からも動かされない存在になるということ。
「行動をやりきり、結果を出す」ことと「相手とコミュニケーションをとる」ことは無関係だという考え方もあるでしょう。しかし、口を使って「喋る」ことだけがコミュニケーションではないと著者は主張します。「行動」「結果」の積み重ねこそが、効果・効率的なコミュニケーションの大前提になるということ。
結果がついてくることで周囲をリーディングできるようになり、さらにリーディングされなくなるもの。そのため、ますます絶対達成のスパイラルが加速していくというのです。(136ページより)
ペーシング→ラポール→リーディング
コミュニケーションで主導権を握るためには、まず、上司、同僚、部下など相手の「ラポール」(信頼関係)が不可欠。著者の解説によればラポールとは、心理学用語で「親密な信頼関係にあること」。それはコーチングやNLP(ニューロ・リングイス・プログラミング、神経言語プログラミング)でも最重要キーワードとして紹介される概念。
セラピストやコーチと、クライアントとの正しい関係を指し、相互に信頼し合い、「安心・安全の欲求」が満たされている状態を「ラポールが構築されている」というそうです。これが構築されているか否かで、コミュニケーションの質は大きく異なるといいます。
ラポールを構築するには、まず相手とペースを合わせること(ペーシング)が重要。相手とペースを合わせてコミュニケーションをとったり行動し続けると、正しくラポールが築かれるということ。つまり、
【1.ペーシング】→【2.ラポール】→【3.リーディング】
(141ページより)
の順で行う必要があるということ。それぞれの言葉の意味するものを、改めて確認してみましょう。
1. ペーシング
・相手とペースを合わせた言動をする
・相手から信頼されるような言動をする(※信頼を失う言動をしない)
2. ラポール
・一緒にいて、緊張せずにリラックスできる状態
・お互いが心を探り合う必要がない状態
・お互いが相手を尊重している状態
3. リーディング
・相手をリードすることができる
・相手を動かすことができる
・相手に言い分を聞いてもらえる
・相手に協力・支援をしてもらえる
(以上142~143ページより)
自分の思うとおりになにかを進めたい(リーディング)レベルに至るためには、まず相手との関係を構築する必要があるということです。(140ページより)
「ラポール」構築の3つのポイント
「コミュニケーションスキル」とは、「話す力」「聞く力」「質問する力」などのことだと思われがちですが、それは違うと著者は断言しています。もっと重要なのは、言葉として表現しない「非言語コミュニケーション」。そして、非言語コミュニケーションのなかでも、なにより大切なのが「ラポール」。
相手を尊敬していても、その人の前だとつい緊張してしまうというのであれば、ラポールが正しく構築されているとはいえないことになります。一方、リラックスしすぎて、相手に無理難題を押しつけたり、相手の存在を承認できないような態度をとるのであれば、それもまたラポールが構築されているとはいえない状態。では、どうすればラポールを構築できるのでしょうか?
1つ目のポイントは、上記の「ペーシング」。相手とペースを合わせる努力をすることです。たとえば上司であれば、部下と話をする時間をつくる、日ごろから声をかけるなどの行動の積み重ねが大切だということ。逆に部下であれば、いわれたことをきちんとこなす。与えられた結果を出すなどを積み重ねていくことで、上司から信頼されるということ。
ラポールは、一度や二度の声がけや接触でつくれるものではなく、行動の歴史によって熟成されていくもの。そのため、関係を構築するには、それなりの時間がかかるわけです。
2つ目のポイントは、ラポールの確認方法。相手と関係が構築されているかどうかは、どれくらいの間、相手を「待てるか」という時間で計測するのだそうです。人を信用していると、相手の行動に物足りなさを感じたとしても、いずれ期待どおりの行動をするに違いないと思って「待つ」ことが可能。しかし、その人を信用していないと、すぐに指摘したくなるものだということです。
相手とラポールが構築されると、肩に力を入れることなくコミュニケーションがとれるようになります。お互いに警戒心を持っていないので、それぞれの存在を尊重しながら、打ち解けて話ができるわけです。そのことを踏まえたうえで紹介されているのが、3つ目のポイント。それは、「すべての人とラポールが構築されるわけではない」ということだそうです。
「相手が望む行動を」といっても、それがどうしても受け入れられない内容であるならば、拒む必要があるということ。拒んだことで関係が崩れるのであれば、それはそれで仕方がないことだという考え方です。営業も同じで、すべてのお客様と関係が構築できるという発想は捨てるべきだといいます。
ただ、多くの人は、相手が期待する行動の基準を正確に知ろうとしないもの。知ったとしても、それを実践し続けていないのだそうです。そこで人と良好な人間関係を構築するために、まずは自分の行動を見なおしてみてはどうだろうかと著者は提案しています。(144ページより)
本書は、どこから読んでもかまわないと著者は記しています。興味のあるトピックを見つけたらそこを開き、何度も読み返せばいいというのです。それを続けていくことで、絶対達成するためのスキルを身につけることができるかもしれません。
(印南敦史)
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