「生まれつきの頭の良さ」を褒めると、子どもは将来成功できなくなる
Inc.:子どもの褒め方や子どもが何かを達成したときかけてあげる言葉をほんの少し変えるだけで、その子が将来親以上に大成功する確率を高くできると言われたら、信じられますか?
本当にそれが可能だということが科学的にわかっています。それどころか、ここで推奨される褒め方は少なくとも過去15年以上にわたって、いわゆる子育ての専門家たちが唱えてきたほとんどのことに反しています。
全ては子どもが何かを達成したときどのように褒めるかに尽きます。このテーマに関して研究調査が実施された結果、今まで気づかなかったいくつかの重要なことが提唱されています。
1.「頭がいいね」というように子どもが持って生まれた能力だけを褒めると、その子どもが学習に喜びを感じたり、抜きんでた人間に成長する可能性は低くなります。
2.子どもが問題解決のための戦略やプロセスを自力で考えた点を褒めると、子どもはさらに頑張ろうとして最後は目標を達成する可能性が高くなります。
お気づきかもしれませがん、そうなると「子どもはとにかく褒めろ」(「誰でも参加賞をもらうべき」という風潮の一環です)と言う専門家の助言は完全に間違っていたことになります。
いったい全体どうなっているのでしょうか。今回は、スタンフォード大学心理学教授のCarol Dweck氏が学童期の子どもたちを対象に行った研究を2つご紹介したいと思います。が、その前に、成長するマインドセットと固定化されたマインドセットの違いを検証しましょう。全てはそこに根差しているからです。
固定化されたマインドセットと成長するマインドセット
子どもが固定化されたマインドセットでなく成長するマインドセットを発達させるように教育することこそ、この研究の本題です。
人間の達成能力のとらえ方に関して言えば、固定化されたマインドセットとは例えば、「頭の良さは生まれつきほぼ決まっており、知能の高さや目標達成能力は生まれつき備わっているかいないかでしかない」と思い込むことです。
一方、成長するマインドセットとは、「知的な分野での達成能力は可変的であり、知性や問題解決能力は時間をかけて発達させることができる」と考えることです。
アルベルト・アインシュタインのことをどう考えるかでどちらのマインドセットかが一目瞭然になるとDweck氏は言います。固定化されたマインドセットの人は「アインシュタインは天才だった」と言い、成長するマインドセットの人はアインシュタインが信じられないぐらい難しい問題を解決した点に注目するはずです。
成長するマインドセットに関しては、ライターのAngie Aker氏が「子どもを褒めるときは、『なんて頭が良いんでしょう』と言うより子どもの学習能力の高さを積極的に褒めましょう」とDweck氏の研究を要約してオンラインニュースサイトUpworthyに投稿しています。
成長する中学1年生とそうではない中学1年生のちがい
Dweck氏の研究に話を戻します。数年前、彼女は自分のチームと共に、373人の中学生を固定化されたマインドセットを示す子どもと成長するマインドセットを示す子どもに分類しました。
その後、その子どもたちを中学1年生の始めから2年生の終わりまでの2年間追跡調査しました。マインドセットのタイプによる二極化は著しいものがありました。
「1学期の終わりまでに、成績には大差がつき、次の2年間でさらに拍車がかかりました。この2つのグループの唯一の差は、マインドセットの違いでした」とDweck氏はビデオで語っています。予想通り、成長するマインドセットを持つ子どもたちは固定化されたマインドセットを持つ同級生たちより良い成績を収めたのです。
Dweck氏は、この2つのタイプの間に次のような重要な差異を発見しました。
1. 目標に違いがある
固定化されたマインドセットの生徒たちが念頭に置く唯一の目標は「何とかして頭の良い子に見えるようにすること」です。そのため、自分の頭の良さが十分に顕示できないような作業は一切避けようとしました。
それに反して、成長するマインドセットの生徒たちは、同級生に自分のミスがわかっても気にしませんでした。誰でもミスはするもので何も恥じる必要はないと考えていたからです。そう考えられたのは彼らの目標が「何としても常に学習すること」だったからです。
2. 努力と失敗に対する姿勢の違い
固定化されたマインドセットの生徒は努力と失敗を悪いことととらえました。一生懸命努力したり成果を誇示できないということは、生まれつきの才能に恵まれていないことを意味するからです。成長するマインドセットの生徒は、それとは逆に、努力は才能を開花するために必要なものだと考えました。
Dweck氏に言わせれば、努力は良くないことだという考えは、「人間の思い込みの中で最悪のものです」とのこと。
3. 退屈と困難に対する姿勢
固定化されたマインドセットの生徒たちは、学校で退屈を感じると必ずと言ってよいほど愚痴をこぼす傾向があることにDweck氏は気づきました。そういう生徒たちは、退屈だということを自分が難しいと思うことに挑戦しない言い訳にする悪循環に陥っているようでした。まさにそのプロセスに陥っているからこそ彼らは退屈していたのです。
一方、成長するマインドセットの生徒たちは、学業を挑戦課題と問題解決の連続として捉えていました。困難に直面しても先生や授業やその他の外的要因のせいにすることはほとんどありませんでした。
11歳児の調査からわかった、子どもを将来の成長に導く褒め方
親である以上、成長するマインドセットである方が有利である理由に加えて、子どもがそういうマインドセットになるにはどうしたらいいかも知りたいはずです。幸いにして、Dweck氏はそれに関しても研究済です。
彼女のチームは11歳児を3つのグループに分けて、年齢相応の知能テストを実施しました。テスト後に、グループごとに子どもの褒め方を次のように変えてみました。
1.1つ目のグループに対しては「頭が良いね」というふうに、持って生まれた頭の良さを褒めるようにしました。
2.次のグループに対しては、子どもがテストを解くときに自力で思いついたプロセスを褒めました。
3.対照群とした3つ目のグループに対しては、合格点を取ったことを褒めて、頭の良さや回答に用いたプロセスについては言及しませんでした。
結果はどうだったでしょうか。まずは予想通りでした。頭の良さを褒められた子どもたちは固定化されたマインドセットになったのに対して、努力やプロセスを褒められた子どもたちは成長するマインドセットになったのです。
しかし、話はこれでは終わらないとをDweck氏は指摘しています。
私たちが最も驚いたことは、生まれつきの頭の良さを褒められた子どもたちは学習をしなくなったことでした。
幼児の場合及び褒め方の具体例
それでは、生まれつきの頭の良さより戦略やプロセスを褒めるのは子どもが何歳の頃から始めるべきでしょうか。Dweck氏によれば、ごく幼い年齢からスタートすべきだそうです。現に、彼女の研究により、母親が1歳から3歳の幼児をどのように褒めるかでその子が「5年後にどのようなマインドセットや願望を持つか」が予見できることがわかっています。
(この研究を終えたDweck氏が、空港で母親たちが幼い我が子に「あなたって天才ね」と言っているのを見かけて、その褒め方をやめさせて歩いた話は有名です)
ではどのように子どもを褒めたら良いのでしょうか。子どもがパズルを解いたり簡単な目標を達成したら、「良くできたわね」と褒める代わりに、「ごめんなさいね。これはあなたには簡単すぎたわね。勉強になるように、もっと難しいことをしましょうね」というように褒めることをDweck氏は勧めています。
でなければ、夕食の席で子どもに「今日は学校はどうだったの?」と聞く代わりに、「今日はどんなことにどのように苦労したか」を話してもらい、それを全員でシェアするのも良いでしょう(親も自分の話をしてくださいね)。
Want to Raise Successful Kids? Science Says Praise Them Like This. (Most Parents Do the Opposite) | Inc.
Bill Murphy Jr.(訳:春野ユリ)
Photo by Shutterstock.
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