お金持ちってそもそもどんな人? その「4つのタイプ」とは
『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』(清田幸弘著、あさ出版)の著者は、税理士として「相続・事業承継対策支援」「資産税コンサルティング」「決算・確定申告(個人・法人)」に携わってきたという人物。これまで1万人以上の資産家から相談を受け、2000人以上の相続税の税務申告を行なってきたそうですが、その結果としてわかったのは、億単位の資産を持つ人は、「お金の残し方」に不安を抱いているということなのだといいます。
そして、お金の残し方には「お金を貯める」という意味での「残す」と、「次の世代に財産を承継する」という意味での「遺す」があり、本書が焦点を当てているのは後者。理由は、2015年に相続税が改正され、大幅な増税となり、お金持ちの間で資産を残すことへの関心が高まっているから。
しかも増税によって、これからの時代は「税金を払うのは、本当のお金持ちだけ」ではなくなるというのです。そこで、
本書では、おもに「資産の残し方」について、私が実際に行った相談、贈与、事業承継、節税などの事例を通して、
「どうすれば、税金を安くできるのか」
「どうすれば、財産を減らさずに次の世代に受け継がせることができるのか」
「どうすれば、自分が育てた事業を継続させていくことができるのか」
わかりやすく解説していきます。(「はじめに」より)
でも、そもそも「お金持ち」とはどんな人のことをいうのでしょうか? 根本的な部分を確認すべく、第1章「『お金持ち』とは、どんな人か?」を見てみましょう。
いくら持っていれば「お金持ち」と呼ばれるのか?
ひとくちに「お金持ち」といっても、その基準はあいまい。また、その言葉から人が連想するイメージもさまざまです。そんななか、税理士として多くの事例を目にしてきた著者は、次の3つの視点からお金持ちの位置づけをしているのだそうです。
条件1. 年間の「所得」が「1000万円以上」ある人
「年収1000万円」をお金持ちの基準にする人は少なくありません。特に会社員(サラリーマン)の物差しは「年収」であるはず。給与所得者のなかで「年収1000万円を超える人口の割合」は4.1%(国税庁「平成26年分 民間給与実態統計調査」しかいないので、たしかに「年収1000万円」をお金持ちとみなすことは可能。
しかし著者は、節税や資産運用でみた場合、「年収」や「収入」ではなく、「所得」で考えたほうが実態に近いと指摘します。「収入」「年収」「所得」を同じものとみなしている人もいるものの、税法上は違うから。
【収入】
・会社員の場合/給料、各種手当、賞与など、1年間に受ける「給与」のこと。「年収=収入」です。「給与」には、残業代や各種手当、賞与などが含まれます。「給与」から、残業代や各種手当、賞与などを引いたものが「給料」です。・自営業者の場合/年商(売上)のこと。自営業者には「年収」「給与」「給料」という概念は当てはまりません。
(23~24ページより)
【所得】
・会社員の場合/年収から「給与所得控除」を差し引いたあとの金額のこと(給与所得)。「給与所得控除」とは、わかりやすくいうと、サラリーマンにとっての「必要経費」です。収入(年収)に応じて、一定金額が控除されます。
「収入(年収)-給与所得控除=給与所得」・自営業者の場合/年商(売上)から、必要経費を差し引いたあとの金額のこと(事業所得)。必要経費とは、「収入を得るために必要な出費」の事です。
「収入(年商、売上)-必要経費=事業所得」
(24ページより)
著者が「所得」を基準にしているのは、必要経費の金額によっては、どれほど収入が多くてもお金が手元に残らないことがあるから。たとえば1億円の収入があっても、必要経費に1億円かかっていれば、差し引きで所得は「ゼロ円」です。年収が多くても、所得がゼロ円の人をお金持ちと呼ぶには違和感があるということ。
会社員の場合は所得がゼロになることはありませんが、年収1000万円超の人には「一律220万円」の給与所得控除があるので(2017年から)、年収が1000万円あっても、給与所得は780万円になるのです。
条件2.「純資産」が「1億円以上」ある人
純資産とは、「資産」から「負債」を差し引いたもの。1億円のマンションを持っていても、銀行からのローンで購入している場合には純資産には当てはまらないということです。条件3.「相続税」の対象となる人
相続税とは、「亡くなった人(被相続人)」の残した財産(遺産)を「相続や遺贈(遺言による贈与)により所得した人(相続人/受遺者)に対して課税される税金。相続税には「いくらまでの財産なら税金を払わなくていい」という「基礎控除」があり、財産の評価額が基礎控除の金額以下であれば、相続税はかからないそうです。
【基礎控除の計算方法】
「3000万円+(600万円×法律で決まった相続人の数)」=基礎控除額
(26ページより)
たとえば、法律で決まった相続人(法定相続人)が3人(妻と子ども2人)の場合、「3000万円+(600万円×3人)=4800万円。
基礎控除額は4800万円なので、財産の評価額が4800万円を超える人は、相続税の対象になるわけです。なお、日本において相続税がかかる人は「相続が発生した人のうち、7、8人程度」しかいないそうなので、「相続税がかかる人」=「お金持ち」と考えることが可能だと著者は解説しています。(20ページより)
お金持ちのタイプは、大きく「4つ」に分類できる
気になるのは、お金持ちがどのようにして「所得」や「資産」を増やしているのかということですが、その収入源は大きく4つに分けられるといいます。
【お金持ちの4つのカテゴリー】
1. 地主系
2. 投資系
3. 事業系
4. キャッシュリッチ系
(28ページより)
地主系は、資産の大半が先代から引き継いだ「土地(不動産)」。現預金や有価証券はそれほど持っておらず、質素で堅実な生活をしている地主が少なくないといいます。なお地主系は、資産を減らさないことが目的の「現状維持タイプ」と、資産を増やすことが目的の「積極タイプ」に分かれるのだとか。
不動産投資や株式投資などで、キャピタルゲイン(債券や株式、不動産など資産価値の上昇による利益を得ているのが投資系。自分の土地に物件を立てる地主系とは違い、都心部や中核都市の賃貸専用物件を購入するケースが多いのが「サラリーマン大家」である投資系。金融機関からの融資を利用し、キャッシュを生み出すビルや賃貸物件を購入しながら利益を拡大していくわけです。
事業系は会社経営者(創業者、2代目、3代目社長)などに多く、事業所得によってお金を得ているそうです。オーナー企業の場合、自社株の大部分を保有しているのは経営者。会社の業績が堅調に伸びていると、株の評価額が押し上げられるので、自社株が数十番に上昇することも。
そしてキャッシュリッチとは、現金や預金など、流動性の高い金融資産を多く保有すること。資産のほとんどが現預金か有価証券で、総資産は自宅を含めて「1億円~2億円」くらいの人が多いと著者はいいます。
地主系の「積極タイプ」は銀行から融資を受け、お金を回しながら資産を増やしているため、発想は「投資系」寄り。地主系でも不動産管理会社を設立すれば「地主兼社長(事業系)」になりますし、逆に会社が不動産部門を持つようになれば、地主系に移行することも可能。またキャッシュリッチ系のなかには、株の売買によって得たお金を元手に中古のマンションを購入し、サラリーマン大家(投資系)になる人もいるそうです。
お金持ちが4種に大別できるといっても、収入源は必ずしもひとつではないということ。(28ページより)
こうした基本を軸として、以後の章ではお金持ちの資産の残し方、事業の残し方などが解説されます。著者の言うように、現時点でお金持ちであるか否かに関わらず、「税金を少しでも安くすること」はとても重要。だからこそ本書を通じ、大切なことを学んでおくべきではないでしょうか?
(印南敦史)
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