4月から始まった、電力の小売り自由化。新たに参入する事業者も次々と登場し、電力小売事業は早くも“戦国時代”の様相を呈している。一方、消費者にとっては、どこの会社がどんなサービスを打ち出しているのか分かりづらい状況だ。そこで今回は、電力会社を選ぶノウハウを紹介してみよう。
1.そもそも“電力自由化”とは?
これまで電力は、地域ごとに決められていた大手電力会社としか契約できなかった。しかし4月からは、一般家庭でも電気の契約先を自由に選べるようになっている。これまで高圧で電力供給を受ける工場やビルなどはすでに自由化が始まっていたが、このたび“全面”自由化になったというわけだ。
東京電力や関西電力といった既存の電力会社に加え、今回の自由化で新たに電力小売事業をスタートさせた企業、すなわち「新電力」も少なくない。ガス、石油、通信、鉄道会社、ケーブルテレビ、商社、家電など、その業種は多岐に及んでいる。
しかしながら、電気の供給先が変わったとしても、電気が家庭に届く仕組みは変わらない。発電所で発電された電気は、新たに電線が引かれたりすることはなく、従来通り電力会社の送配電網で各家庭に提供される。
また、新電力の発電にトラブルがあって思い通りに供給できなくなった際には、既存の大手電力会社からの供給に切り替えられる常時バックアップ制度もある。安くなかったらといって停電しやすくなったり、明るさが保てなくなるといったことは原則的に起こらないわけだ。
2.電力自由化によって生じるメリットは?
電力自由化によってもたらされるメリットは、やはり自由競争による“お得”さだろう。
しかし、単に価格が下がるというよりは、セット割引によってお得感を出す傾向が顕著になっている。たとえばガス会社ならガス料金、通信会社なら携帯電話やインターネット料金、石油会社ならガソリン料金といったように、別のサービスと電力のセット割引だ。また、Webサービスやポイントサービスとの連携を図り、ポイントが貯まることによってお得感を醸成するケースもみられる。
なお、既存の大手電力会社も、従来の料金プランに加えて、電力の使用量や使用時間帯など、ライフスタイルに合わせたプランを設けたり、さまざまな分野や業種との連携によって、電力小売の戦国時代を乗り切る施策を進めている状況だ。
3.注目の「電力比較サイト」を活用してみよう
「価格のみの勝負」であれば、消費者としても選ぶのはカンタンだ。しかし前述したように、“お得感”の出し方は企業によって異なるため、なかなか比較検討しにくい実状がある。
そこで今、注目を集めているのが電力比較サイトだ。4月5日(火)にこのブーストマガジンでも取り上げた「タイナビスイッチ」では、自宅の郵便番号をはじめ、現在の電気代や生活の時間帯などを入力すると、累計44社の電力会社・合計216プランの中から「電気代節約額順」に電力会社が表示される(2016年4月5日現在)。
その他にも検索エンジンで上位表示される「エネチェンジ」や「価格コム 電気料金比較」なども同様に電力会社とプランを比較するサイトだ。この2サイトは、実質的に節約できる金額だけでなく、付与されるポイント、セット割引の有無などもひと目でわかるので、参考にしてみるのもいいだろう。
4.悪徳商法に引っかからないためには
新たな制度が導入される際には、その制度に便乗し、悪事を働く輩が出てくるのも世の常。まず気をつけたいのは、電力小売り自由化に便乗した詐欺だ。
具体的には、新たな機器の購入を薦められたら要注意。スマートメーターの設置場所変更など、メーターの取替えに伴う工事に費用がかかることはあるが、原則的に新たな機器を導入することはないからだ。
また、契約する小売電気事業者をしっかりとチェックすることも大切。「経済産業省 小売電気事業者一覧」でネット検索し、きちんと国から定められた業者であるかどうか確認しよう。
契約トラブルやクーリング・オフ等の相談は、電話番号「188」の消費者ホットラインにかければ、地域の自治体窓口につないでくれる。
万が一のことを考えて、クーリング・オフできることも念頭に入れておきたい。訪問販売もしくは電話勧誘販売で新料金の申し込みを行った場合、法定書面を受け取った日から起算して8日以内であればクーリング・オフができる。
5.急いで決めず、じっくり検討を!
なにより伝えたいのは、4月から電力自由化がスタートしたと言っても、急ぐ必要はないということ。なにもしなければ、現在供給を受けている電力会社が引き継ぎ、今までどおり電気を使うことができる。ただし前述の通り、既存の電力会社でも場合によってはお得になる新プランが導入されるケースもあるため、まずはそこをチェックしてみることをおすすめしたい。
また、お得になるからと言って焦って新しい電力会社に変えても、途中で解約した場合、違約金が発生することも。契約前に「契約期間の縛りがあるか」「途中解約の場合は料金が発生するのか」などもチェックしておこう。ただし、新電力会社の供給エリア外に引っ越す場合は免除になるなど、柔軟に対応してくれる会社が多いようだ。
ちなみに、マンション住まいの方も電力会社の切り替えは可能。ただし管理組合などを通じ、マンション全体で一括受電契約をしている際には、その限りではない。契約内容やマンションの規約と照らし合わせ、住民の同意を得るなど、管理組合等を通じて対処しよう。
なお、電力小売自由化そのものについて不明点があれば、電力自由化専用ナビダイヤル(0570-028-555)に問い合わせるか、経済産業省のウェブサイトをチェックすることをおすすめしたい。経済産業省の資源エネルギー庁に「登録小売電気事業者一覧」の記載もあるのでご覧いただきたい。
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連日、ニュースで取り上げられている電力自由化だが、現状と照らし合わせ、各社のサービスを比較検討していくことが大切だ。ともあれこれから、会社や家庭、友人同士の集まりで「電力会社、どこにした?」という話題が出るのは必定。博識を披露すべく、各社のサービスや特長などを踏まえておこう。
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