3Dプリンターといえば、今トレンドのキーワード。ブーストマガジン読者の皆さんもニュースやSNSで日頃から目にしているキーワードだろう。この3Dプリンターは何がスゴイかと言うと、これまで多額の費用をかけて金型や大型装置を導入する必要があったモノ作りが、3Dプリンターひとつで実現できるところだ。
資金の乏しい中小企業や個人でも3Dプリンターさえあれば、金型無しで自社製造が可能でコストも製作時間も大幅に削減できるのだ。しかし、“何でも作れる”というわけではなく、材質などの制限もありすべてのモノ作りが実現するということではない。
3Dプリンター本体および関連市場を合計した2014年の国内の売上額は336億3,000万円(前年比成長率65.3%)である(IDC Japan 株式会社調べ)。2014年~2021年の年間平均成長率は18.8%、2021年の総売上額を1,123億7,000万円と予測されており、急成長が見込まれる市場である。
今回はそんな3Dプリンターの魅力に迫るために、今TVCMも放映中のTechShop Tokyoで3Dプリンターを体験させてもらった。
3Dプリンターの実力とは? 実際に体験させてもらった
TechShop Tokyoは、東京都港区赤坂(六本木一丁目駅徒歩1分)にあるDIY工房だ。“BUILD YOUR DREAMS HERE”というコンセプトの元、3Dプリンターだけではなく塗装や木工などのマシンを会員が使えるシステムである。そんなTechShop Tokyoに取材依頼をしたところ、快くオッケーをいただいたので、ブーマガ取材班がお邪魔させていただいた。
店内は広々とした空間で清潔感もバッチリ。溶接エリアやカラーリングエリアなど個室に仕切られている部屋もあるが、写真のワークスペースエリアが真ん中に広く設置されているので、設計図を広げたり、仲間と一緒にワイワイ話しながらDIYを楽しむことができる。これは使いやすそう。
到着してすぐに、3Dプリンターを体験させてもらった。今回は、TechShopのロゴマークでもある、Shopの“ o ”の部分ギア型チャームを作ってくれるというのだ。なんともありがたいお心遣い、TechShop Tokyoの神対応に感謝!
今回使用する3Dマシンはこちら。MarkerBot社のパーソナル3Dプリンターだ。はるばる海の向こう、米国ニューヨーク市ブルックリンの熟練技術者によって組み立てられた3Dプリンターなのだとか。外寸は、528(L)×441(W)×410(H)mmと一般的な家に設置するには、ちょっと大きいか。
パソコンの3D設計図を元に3Dプリンターに出力していく。この3D設計図は、TechShop Tokyoに事前に準備していただいたもので、開催している講座(クラス)などでも、この3D設計図を使用しているとのこと。パソコンに3D設計図があれば、大きさなどを自由に変えられるのだ。ちなみに出力できる大きさは、252(L)×199(W)×150(H)mmなのだが、当然サイズが大きくなるほど出力時間は増える。
青い土台の上に3Dプリンターに設置されたフィラメントを出力していく。はじまってすぐの写真。かすかにフィラメントを出力しているのが分かる。ちなみにフィラメントとは、細かい糸状の構造という意味なのだが、この3Dマシンでは、糸状の樹脂をリールに巻かれた状態で本体にセットし、熱に溶かされた樹脂が出力されて積み上げられていくのだ。
約30%の出力で、だんだんギア型が浮き彫りになってきた。
<3Dプリンターの出力動画>
映像を見ていただくと分かると思うが、クィンクィンと音を立ててフィラメントを出力するアーム部分が小刻みに動き、ギア型を形作っていく。5〜6年前の話になるが、“3Dプリンターの音がうるさい”と小耳に挟んだことがあったのだが、音がうるさいという印象は全くない。
これで出力が100%完了だ。完成まで約25分。かなりの短時間で出力できることが分かる。筆者は、3Dプリンターの観察をしつつ、TechShop Tokyo店内の様子を撮影したり、スタッフの方にお話を聞いたりしていたのだが、「え、もう終わり?」と呆気にとられてしまった。
出力された立体が青い土台にくっついているのでヘラを使って剥がす。
最後にギア型チャームの土台となるラフト部分を剥がし取って完成だ。ラフトとは、本体のギア型との接地面に敷く座布団のような存在。通常は手で簡単に剥がせるが、乱暴に剥がすと本体部分が割れることもあるため注意が必要だ。
完成したギア型チャームがこちら。TechShopのロゴが精巧に作られている。上のリングに紐を通せば、ネックレスとなる。なんと上のリング部分は、繋目がなく可動するのだ。あの作り方で素材が樹脂だけに何とも不思議だが、これが3Dプリンターの最大の魅力の一つと言えよう。
今回作成したのは、真ん中のギア型チャームだ。一番左がTechShop Tokyoで開催される講座(クラス)で作っている大きさだという。iPhone5Sと比べるとその大きさが分かっていただけるだろう。3Dプリンターなら、大きさや色も簡単に変えられるのだ。
他にもTechShop Tokyoで作った作品を見せていただいた。3Dデータさえあれば、この写真のような複雑な立体も作成可能。真ん中のギアを軸に周りのギアがクルクルと回るのだ。
まとめ
如何だっただろうか。以前は3Dプリンターというと、購入を躊躇するほど機器自体の価格が高く、レンタル利用など探してもショップが近くに無かったり、実際に始めようするとなかなか面倒なイメージがあった。しかしTechShop Tokyoのように3Dデータだけあれば、モノ作りができるお店も増えてきている。モノ作りに興味があるブーストマガジン読者は一度3Dプリンターにトライしてみてはどうだろうか。TechShop Tokyoには3Dプリンターを体験できる講座(クラス)が用意してあるので、そこからスタートだ。
今回体験してみて、筆者の感想を付け加えると、思った以上に簡単にできるものだなぁ…と感じた。出力するオブジェクトの3Dデータは必要だが、最近では3Dプリント可能なデータがネット上で公開されている。「3Dデータ」で検索するだけでもいろいろなデータ提供サイトが出てくる。もしあなたが3D用CADが使えるのであれば、自分のアイデアや作りたいモノを手にできる。その反面、大学職員の男が2014年に3Dプリンターで拳銃を製作し所持していた銃刀法違反で逮捕されたのも記憶に新しい。3Dプリンターで作られた銃に銃刀法違反が適用されたのはこの事件が初めてだ。また3Dデータによっては、知的財産権、肖像権、プライバシー権を侵害することもあるので、確実に問題が無いことが確認できない限りは私的に楽しむ範囲にとどめよう。
簡単にモノ作りができるのと同時にその危険性が指摘されているのも事実。しかしTVやパソコンと同様に一家に一台3Dプリンターがあるという時代が迫っているのかもしれない。筆者はこの取材のおかげで3Dプリンターが欲しくなってしまった。もしあなたがおすすめの3Dプリンターがあれば、是非こちらのフォームから教えていただきたい。
ますます目が離せない3Dプリンターを今後もブーマガ編集部は追っていきます! 皆さん、お楽しみに。
取材協力:TechShop Tokyo
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